読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

立てる裸婦

メナード美術館「35アーティスト vol.3」

小出楢重 1930年 <br/>油彩・カンヴァス 84.0×53.2㌢<br/> メナード美術館蔵
小出楢重 1930年 
油彩・カンヴァス 84.0×53.2㌢
 メナード美術館蔵

 大正〜昭和期の洋画家・小出楢重(1887〜1931)は、裸婦を多く描いた。同時代の洋画家たちは西洋的なプロポーションを理想としたが、小出は「おのおのの味があるから面白い」と日本人の体型を好んだという。


 横たわるポーズの作品が多い中、本作は立ち姿だ。張りのあるお腹や肉付きの良い太ももを強調し、曲線美と力強さを真正面から表現した。


 二科展初出品で新人賞を受けるなど華々しくデビューした小出は、フランス留学を経て日本の洋画表現を模索してきた。1926年には兵庫県芦屋市に洋風のアトリエを構え、裸婦や静物などの室内画を集中的に制作した。


 本作の背景にも、洋風の机や絨毯が描かれる。「畳や布団など生活の中にいる裸婦の姿ではなく、裸婦像の造形としての面白さに重きを置いたようだ」と、館長兼学芸課長の村上久美さん。立像を意識し、背景も縦長の構図としている。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム