読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

本草図説

西尾市岩瀬文庫「植物への恋文(ラブレター)」

高木春山著 1852年(未完)
 西尾市岩瀬文庫蔵

 「本草図説」は195冊に及ぶ、江戸時代のカラー博物図鑑。市井の本草家・高木春山(?~1852)がただ一人で、20年以上かけて作成した。植物をはじめ魚、鳥、獣、虫、鉱物、自然現象にいたるまで万物を描いた精密な肉筆画に、見聞や書籍に基づいた解説が付く。


 春山は志半ばで死去したため未完だが、「史上最大級ともいえる分量、質の高さも圧倒的」と、西尾市岩瀬文庫学芸員の上野加耶子さんは話す。植物図には根や種も描かれるなど「様々な角度から記録され、図鑑的な要素が強い」。


 古代中国の薬物学を起源とする本草学は江戸時代に全盛となり、自然界のあらゆる事物を対象とする博物誌的な研究に発展した。様々な図譜が刊行され、時代とともにより精細な写生図が描かれたという。


 今展は、植物への飽くなき探究心から生まれた本草書や植物図を中心に紹介。本草学から近代植物学への変遷をたどる。

 

 ※会期は2月12日まで。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム