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美博ノート

木華開耶媛(このはなさくやひめ)

名都美術館「没後50年 堂本印象とは何者か」

1929年 絹本着色 額(二曲一隻) 170.0×238.0センチ 京都府立堂本印象美術館蔵

 春の野に座るのは、日本神話の女神、木華開耶媛。純白の衣をまとい、黒髪には豊穣(ほうじょう)を象徴するブドウのツタが添う。

 作者は、大正~昭和期の京都画壇で活躍した日本画家・堂本印象(1891~1975)。西陣織の図案家を経て、27歳で帝展に入選してデビューした。本作は、画壇での地位を築いた30代後半で描いた。
 気品ある表情の女神は、神秘的な存在感を放つ。印象はこの時期、格調高い女性像や花鳥画のほか、仁和寺や東寺など寺社の障壁画制作にも打ち込んでいた。「本作は印象が求めていた理想を集約した代表作だといえる」と、学芸課長の鬼頭美奈子さんは紹介する。
 女神の周りには満開の桜。足元にはタンポポやツクシ、ゼンマイが伸びる。「植物の細やかな描写も特徴。様々なモチーフを採り入れながらも、女神の姿がパッと目を引く。緻密(ちみつ)な構図が生きている」と鬼頭さんは話す。

 

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