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美博ノート

カノプス壺(つぼ)と蓋(ふた)

豊田市博物館「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」

紀元前664~同525年またはそれ以降 高さ24.8~29.3センチ、直径11.4~13.4センチ

 古代エジプト人にとって、死後に復活して永遠の命を得るためには、肉体を保存することが重要だった。ミイラを作る際、腐敗を防ぐために内臓を取り出して「カノプス壺」に入れた。

 壺の蓋は王権の象徴・ホルス神の4人の息子にちなみ、動物を表現している。ジャッカルをモチーフにした壺には胃を、ハヤブサには腸、人間には肝臓、ヒヒには肺を収めた。心臓は、生前の行いに対する審判ではかりにかけられるため遺体に残したという。
 最古の物とされるカノプス容器は、ギザの大ピラミッドを造営したクフ王の母ヘテプヘレスの墓から発見された。「それまで自然に乾燥させていた遺体から内臓を取り出すようになったのは、革新的なことだった」と、今展監修を務める河江肖剰(ゆきのり)名古屋大教授。「ピラミッドも現代から見れば完成されたものに思えるが、試行錯誤を重ねて建造されていた」と説明する。

 

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