ポリゴン、ヴィンターライゼ/冬の旅 コーヒーセット
妻と協業。フィンランドの風景や暮らしを映すデザイン
歌川広重が「名所江戸百景」で描いた満月の京橋。竹問屋が竿(さお)を並べた付近は「竹河岸」と呼ばれた。赤い纏(まとい)を掲げて橋を進むのは、「大山詣(おおやままい)り」帰りのとび職の一行だ。月を見上げる船頭に、行灯(あんどん)を手に行く人。それぞれ闇を照らす光に目をやっているのだろうか。
電気のない江戸時代、夜の景色はどう表現されたのか。広重は、漆黒の闇夜には墨を、深く澄んだ川には藍を使い分けた。藍には粒子が細かくぼかしやすい西洋の人工染料「ベロ藍」を用い、「広重ブルー」として知られる鮮やかな青藍(せいらん)で夜の川を表現。月には色を刷り込まず、和紙の元の色に満月の明るさを重ねた。
学芸員の鏡味千佳さんによると、広重の視点は川面から橋と月を見上げる位置にある。遠近法の焦点を立てかけられた竹の奥に置くことで、縦の印象が強調され、空が高く見えて満月に目がいくという。「橋桁を左に二つ入れた構図は、切り取った橋の右側を想像させます。大胆なバランス感覚ですね」