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美博ノート

真乳山山谷堀夜景(まつちやまさんやぼりやけい)

三菱UFJ銀行 貨幣・浮世絵ミュージアム 「闇に光る 魅惑のビーム」 

歌川広重 竪大判 1857(安政4)年

 行灯(あんどん)に導かれ水辺を進む赤襟を返した芸者。その足元を照らしつつ先を行くもう一人の存在も暗示される。

 シルエットの葉桜で天を覆った星空には、何やら模様が見て取れる。「歌川広重は木版の板目を意図的に写し、渦巻くような漆黒の闇を表現しています」と、学芸員の鏡味千佳さん。木目の夜空に輝く星が川面にまで無数に映っており、粋だと話す。
 ここはかつての水路、山谷堀が隅田川に注ぐ場所。奥のこんもりとした緑の小山は、今も「待乳山聖天(まつちやましょうでん)」がある標高約10メートルの丘だ。その間に見えるのは、山谷堀にかかる今戸橋のシルエットと、橋のたもとにあった有名料亭の明かり。対岸に目を凝らすと、船も見える。隅田川から山谷堀をさかのぼり、船で遊郭吉原へ行くのがしゃれた遊び方だったという。
 夜の光を表現した浮世絵が並ぶ本展。電気がなかった時代の日没後の世界に描かれた、今はなき文化を紹介している。

 

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