静日
淡い色調の画面を眺めていると、手前に花が、その奥に3羽の鳥が見えてくる。
戦後の京都画壇を代表する山口華楊(かよう)に学んだ日本画家、岩倉壽が亡くなる3年前に描いた本作。風景に始まる岩倉の画題は、後年、鳥や花、果物や野菜など身近なものに変化していく。
学芸課長の鬼頭美奈子さんは、「京都画壇では、自然を慈しむまなざしが継承されてきました。対象と一体化するまで観察し、五感で捉えた心象を表現する姿勢も、通底しています」と解説する。
同じく京都で活躍した徳岡神泉の代表作に、画面の中心にカブを一つ描いた「蕪」がある。この作品について徳岡は「蕪には不思議な力強さや息吹を感じる」「蕪の中には宇宙のあらゆるものが凝縮している」と書き残している。
岩倉は徳岡の描く世界観を理想としていたという。「岩倉も、カブやナスに宇宙を見ていたのかもしれません」と鬼頭さん。「曖昧模糊(あいまいもこ)な世界観や感覚的な筆致に心がどう動くのか、向き合ってみてください」