読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

舟越桂「長い休止符」

音からうまれる色ワールド(メナード美術館)

 


美博ノート
舟越桂「長い休止符」

 

 憂いのある表情で演奏のポーズを見せる男性。しかし腕の中に楽器はない。足元に広がる影に寄り添うように、鉄のバイオリンが置かれている。

 これまで一貫して人物像に取り組んできた舟越桂(63)は、その作品の多くが上半身像。全身像は珍しい。クスノキから制作した像を自立させるためもあり、影の部分には鉄を選んだが、その質感が重々しい雰囲気を加えていた。

 作品のモデルとなったのは、音楽家の古い友人。背景には、厳しい音楽の世界で挫折を経験した彼の苦悩があったという。「音楽に向き合う友人の姿に、舟越自身も思いを寄せたのでは」と学芸員の門田彩さん。タイトルが示す通り、静寂の漂う作品だ。

(2015年2月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム