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私の描くグッとムービー

鳥居ユキさん(ファッションデザイナー)
「俺たちに明日はない(ボニー&クライド)」(1967年)

魅せられた数々のファッション

鳥居ユキさん(ファッションデザイナー)<br>「俺たちに明日はない(ボニー&クライド)」(1967年)

 大恐慌が起きた1930年代のアメリカ。さえない日々を悶々と過ごすボニーは、ひょんなことから刑期を終えて出所したばかりのクライドと出会う。犯罪を平然とやってのけるクライドにひかれ、ボニーも様々な悪事に手を染めていく。実在した2人の犯罪と逃避行を描いたアクション映画です。スピード感あふれる映像は見ものですが、なにより魅了されたのはフェイ・ダナウェイ演じるボニーのファッショナブルな衣装の数々。とにかくかっこよくてセクシーでした。

 60年代後半、様々な分野で活躍する人たちから刺激を受け、自分らしい感覚や表現力を身につけたいと思っていた私。そんなときに見たこの映画で、彼女の罪を犯しているのにクールで悲壮感がない様、クラシックなものをうまく取り入れたスタイルに強くひかれ、この年のコレクションは古き良き時代の要素を現代に取り入れた「ニュークラシック」をテーマにしようと決めたんです。

 イラストに描いたのは、ボニーのファッションの中で最も好きなスタイル。前髪を隠してかぶったベレー帽、女性らしい立体感のある厚手のニットにスカーフ、そしてミディ丈のタイトスカート。あまりに気に入ったものだから、同じファッションに身を包んで、たばこを片手に持った自身を銀座のお店で撮ってもらいました。

 ハッピーエンドの映画が多かったなか、これは衝撃的な展開で幕を閉じます。人には色々な人生、生き方があるように、映画にも色々な描写、終わり方がある。多様性の価値に気づかされた作品でした。

(聞き手・陣代雅子)

 

  監督=アーサー・ペン
  製作=米
  出演=ウォーレン・ベイティ、フェイ・ダナウェイほか
とりい・ゆき
 1943年生まれ。75年から2008年までパリ・コレクション、1985年から東京コレクションに参加。今年3月、通算117回目のコレクションを発表。
(2020年7月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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