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私の描くグッとムービー

あんびるやすこさん(絵本作家・児童書作家)
「キューティ・ブロンド」(2001年)

「絶対できない」偏見を覆す痛快さ

あんびるやすこさん(絵本作家・児童書作家)「キューティ・ブロンド」(2001年)

 家で映画を見ることが多く、何を見ようか選んでいるときにビジュアルが可愛くて、何だろうって思って見たのがきっかけ。すごく前向きな物語で気に入りました。主人公のエルは髪がブロンドで理知的に見えないという理由で恋人に振られますが、猛勉強して彼を追ってハーバード大の法科大学院に入学。彼を取り戻したいだけだったのが、法律の勉強をするうちに人の役に立つ喜びに目覚め、弁護士の道へ。何かを失ったところから別の扉が開き、自分の信念のために生きる女性に変わっていく。見ていてスカッとする映画です。

 自分が何を大切にしたらいいかに目覚めたエルのシーンが特にいい。エルが通っていたサロンのネイリストで、お互いの悩みを相談し合っていたポーレット。彼女の元恋人から法律用語を駆使して愛犬を取り戻す場面で、彼女から「ありがとう」って言われて。人から感謝される生き方に気づいた瞬間なんです。

 「ブロンドと知性は両立しない」と偏見の目でエルを見ていた人々が、次第にエルを応援し始めるのも痛快。エルの誠実で何事にもベストを尽くす姿が、魔法のように偏見を氷解させ、周囲の人を変えていきます。映画はコメディーですが、話にリアリティーを感じるのは、偏見や思い込みで内面を見ようとしない人々が登場するからかも。

 エルのように周囲から「絶対出来ない」と言われたことも、自分を信じれば成し遂げることが出来る。誰にとっても励みになる映画です。夢をあきらめそうになった時、何かを失ってへこんだ時に見てほしいですね。

(聞き手・小松麻美)

 

  監督=ロバート・ルケティック
  製作=米
  出演=リース・ウィザースプーン、ルーク・ウィルソン、セルマ・ブレアほか
あんびるやすこ
 「なんでも魔女商会」(岩崎書店)、「ムーンヒルズ魔法宝石店」(講談社)ほか。近著は「魔法の庭ものがたり」第24巻(21日発売予定、ポプラ社)。
(2020年12月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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