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私の描くグッとムービー

津村耕佑さん(ファッションデザイナー)
「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年) 

枠にとらわれない ビートルズらしさ

津村耕佑さん(ファッションデザイナー)「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年)

 何度か見てはいるものの、最初から最後まで通して見たことはあまりないんですよ。物語の起承転結がない作品ですから。イギリスでは酷評されたようですが、ビートルズらしいウィットに富んだ構成。ぼくはおもしろくて好きですね。

 映像はビートルズはじめ老若男女が参加するバスツアーの様子がメイン。奇妙な出来事が次から次へと起こるけれど、全てにつながりはない。突然マラソン大会が始まったと思ったら、人だけでなくバイクやバスまでが参加する流れになったり、ツアー途中の昼休憩で食事を楽しむ男女が食べものをゴミのように扱って、品良く食事をする客の気分を害したり。映画が製作された1960年代後半は混沌とした世情。その中で社会が決めたルールを気にせず自由に生きることの大切さ、イギリスの経済成長を妨げた固定的な階級社会への批判を伝えている。既成概念にとらわれない見方、考え方を教えられた気がします。映像の合間合間にサイケデリックなデザイン、東洋の宗教や哲学に影響を受けたようなミュージックビデオが流れるところも当時の流行が感じられて印象的。

 ストーリーに一貫性がないことから、イラストは一場面ではなく、時代を象徴するヒッピー文化、ヒッピーがひかれたインド仏教などから着想して描きました。当時のファッションに多く取り入れられたツタ、木の実、葉、花などのボタニカルなデザインを左右対称に。色は見る人が自由に感じてほしいので、インド由来のインディゴブルー単色にしました。さて、あなたはこれにどんな色をつけますか?

(聞き手・陣代雅子)

 

  監督=ザ・ビートルズ
  製作=英
  出演=ザ・ビートルズ、ジェシー・ロビンズ、デレク・ロイル、マンディー・ウィートほか
つむら・こうすけ
 「FINAL HOME project」主宰。武蔵野美術大教授。造形画家として数々の展覧会に出品するなど幅広く活動する。
(2021年2月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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