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私の描くグッとムービー

チャンキー松本さん(切り絵師)
「バグダッド・カフェ」(1987年)

変化を呼ぶ「よそ者」の優しさ

チャンキー松本さん(切り絵師) 「バグダッド・カフェ」(1987年)

 ドイツからの旅行者・ジャスミンがアメリカの砂漠にたたずむ寂れたモーテル「バグダッド・カフェ」にたどり着き、不機嫌な女主人・ブレンダやそこに集う人々との交流を描いた物語です。しゃれた話となにより主題歌の「コーリング・ユー」がよくて、今でもサントラを聞きながら料理を作っています。とくに夕暮れ時に合いますね。

 最初は受け入れられなかったジャスミンが、部屋の掃除をしたり手品を披露したりして、カフェの人たちと徐々に心の距離が近くなっていくのがいいですよね。僕も10年ぐらい前から町おこしの一環で地方のいろんな町に滞在し、盆踊りの歌やアニメーションを作っていたことがあるんですが、滞在中は毎日人と交流するようにしています。ジャスミンが手品を披露するように、会話の合間に切り絵で相手の似顔絵を作って見せると、グッと距離が縮まって。たまに宴会もして、最終的には皆で盆踊りを踊る。その感じが物語と似ていて、分かる分かるって思います。

 ジャスミンは正面からの表情が可愛くて、ブレンダは勝ち気な横顔のイメージ。そんな2人と、夕日が映し出す町のシルエットを切り絵で表現しました。性格は正反対なのに、最終的には親友になっているところがおもしろかったですね。

 ブレンダは子どもを叱ってばかりでしたが、ジャスミンは優しく接していました。場を和らげたり、何か気づかせてあげたりするのは、よそから来た人だからできるんじゃないかと思うんですよ。よそ者の感覚の大切さ。そういうのは僕も意識していますね。

(聞き手・片山知愛)

 

 監督=パーシー・アドロン
   製作=西独
   出演=マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・パウンダー、ジャック・パランスほか
ちゃんきー・まつもと 
 1967年香川県生まれ。音楽家やパフォーマーとしても活動。「えいごであそぼwith Orton」(Eテレ)の切り絵を担当。
 チャンキー松本HP  http://kiri-nigaoe.com/
(2022年7月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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