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私の描くグッとムービー

黒川絵里奈さん(切り絵作家)
「アマデウス」(1984年)

才能への渇望 花開くためには

黒川絵里奈さん(切り絵作家)<br>「アマデウス」(1984年) 

 モーツァルトの天才的な才能に嫉妬した宮廷音楽家・サリエリの吐露を中心に、音楽に生涯を捧げた2人の人生を対比的に描いています。

 初めて見たのは小学生のころ。テレビ放映した時の吹き替え版のビデオテープが家にあったんです。今はDVDを持っていて、制作に行き詰まった時などに不思議と見たくなる作品です。

 舞台制作に携わる仕事柄、音楽からイメージを得ることもありますし、この映画からはたくさんの影響を受けています。ヨーロッパ独特の色彩センスや舞踏会の仮面の造形が個性的でとても面白く、町の香りが漂ってきそうなほど作り込まれた映像表現は、何度見ても発見がありますね。

 モーツァルトと父親の関係も描かれますが、音楽やアートの世界では、本人の努力はもちろん、金銭面や家庭環境など様々な条件がそろってはじめて「才能の種子」が花開くこともあると思うんです。支えを持たず、神に祈り続けたサリエリの苦悩や努力してもかなわない才能への渇望には、多くの人が共感するのではないでしょうか。

 切り絵の制作を始めて10年、自分にしかできない表現がしたいと模索してきました。今回の半立体の切り絵では、小さな空間から音楽が聞こえてくるような奥行きのある世界を表現しました。

 異なる歯車は世の中の様々な才能です。サリエリが思い描いた理想像や種子がありながら育てる環境がないまま枯れてしまった名も無き子どもたち、モーツァルトがとらわれた父親の呪縛とそれを利用し追い詰めたサリエリなど、複雑な要素を絡めています。

(聞き手・斉藤由夏)

 

 監督=ミロス・フォアマン
   脚本=ピーター・シェーファー
   出演=F・マーレー・エイブラハム、トム・ハルスほか
くろかわ・えりな
 舞台美術・人形制作も手がける。8月25日~9月4日、東京・本郷の喫茶店「金魚坂」内で個展「夏の面影」を開催。
(2022年8月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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