「スタンド・バイ・ミー」(1986年) 絵本作家のえがしらみちこさんが思い出の映画「スタンド・バイ・ミー」を語り、イラストを描きました。
戦争の爆撃で亡くなった息子が残した松ぼっくりが木となり、その木から作った人形に命が宿る。イタリアの児童文学作品「ピノッキオの冒険」を元に、ギレルモ・デル・トロがストップモーションアニメにしたダークファンタジーです。第1次世界大戦下のイタリアが舞台になっており、現実世界に即した内容に書き換えられています。
リアルな木で作られた人形が実際に動く。コマ撮りの作り方が作品とすごくリンクしていて、CGではない手作りの質感にまず目を奪われます。私もコマ撮り作品の制作経験があり、キャラクターを数センチ動かすのにも長時間の撮影が必要なことがわかるので、ここまで大がかりな作品を見ることができるぜいたく感にも感動しました。
ポップに描かれながらもお話自体は深いメッセージが込められています。ゼペットは亡くなった息子を忘れられず、無邪気に慕ってくるピノッキオを素直に受け止められない。ひどい言葉で突き放してしまうシーンでは、それは言ってはダメな言葉だよという思いと、ゼペットの抱えている葛藤も理解できるのでもどかしさを感じます。そんな2人が互いを認めながら過去と向き合って寄り添っていく姿が素敵な映画です。
ピノッキオはゼペットが酔っ払いながら作っているので、よく見ると左右非対称だし、釘も飛び出ている。そういう細かな作り込みが物語に奥行きを与えている気がします。デル・トロの作品はセットが凝っていて、美術や小物の中から人物像やストーリーが浮かび上がってくるんです。死の精霊などクリーチャーのデザインも一癖あるけど、見ているとだんだん可愛く思えてくる。全てのキャラクターにデル・トロの愛を感じます。
(聞き手・中山幸穂)
監督=ギレルモ・デル・トロ、マーク・グスタフソン
制作国=米 脚本=ギレルモ・デル・トロ、パトリック・マクヘイル 声の出演=ユアン・マクレガー、デビッド・ブラッドリー、グレゴリー・マンほか
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