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郵政博物館

郵便配達の風景 正月の象徴に

郵政博物館
「正月用引札」 1911年 縦25.5×横37.8センチ。「一志郡家城」は現在の津市
郵政博物館 郵政博物館

 郵便・通信の総合博物館である当館は、旧逓信省時代の資料を含め約200万点を収蔵しています。

 「正月用引札」は商家が年賀のあいさつとして得意先に配った広告チラシ。自転車に乗った2人の郵便配達員が掲げるのは暦(右上)と郵便・電報料金表(中央)です。現在の企業カレンダー同様、目に付く場所に長く貼ってもらう工夫です。

 絵柄が郵便配達なのは、はがきが発行された1873(明治6)年以降、年始の訪問に代えた年賀状の風習が広まったことが背景にあります。年賀郵便の特別取り扱いも普及し、郵便配達は正月風景を象徴するものとなりました。

 配達員の制服をよく見ると、左胸の記章はタイ(左)と小づち(右)。福の神の恵比寿と大黒天が配達員に扮するというのもおめでたいですね。

 背景右側の建物のシルエットは東京・神田駿河台のニコライ堂と思われます。左側の蒸気機関車や配達員の自転車も含め、当時のモダンな風景や風俗を反映しています。犬が何匹もまとわりつくように描かれているのは、集配時刻が決められた配達員は走ることが多く、よく犬に追いかけられたからではないでしょうか。

 集配の苦労は犬だけではありませんでした。肩にかけて携行した「郵便ラッパ」は主に山道で熊やイノシシよけに使われました。また渡船場で船頭を呼んだり、吹雪の際などに居場所を知らせ遭難を防いだりした記録も残っています。

(聞き手・斉藤由夏)


 《郵政博物館》 東京都墨田区押上1の1の2 東京スカイツリータウン・ソラマチ9階(問い合わせは03・6240・4311)。午前10時半~午後4時半(入館は30分前まで)。「引札」は1月16日まで「年賀状展」で展示、「郵便ラッパ」は常設展示。原則(月)(祝の場合は翌日)、年末年始休み。

いむら・えみ

副館長・学芸員 井村恵美

 いむら・えみ 「H・C・アンデルセン生誕200年記念展」「efuto=絵封筒展」など企画展を多数担当。同館展示施設のコンセプト設計も手掛けた。

(2021年12月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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