読んでたのしい、当たってうれしい。

私のイチオシコレクション

榛東村耳飾り館

縄文人を飾った 多彩な文様

茅野遺跡出土 直径4×高さ1.9センチ
茅野遺跡出土 直径4×高さ1.9センチ
茅野遺跡出土 直径4×高さ1.9センチ 茅野遺跡出土 直径5×高さ2センチ 十二前遺跡出土 直径2.9×高さ2センチ

 群馬県のほぼ中央、榛東村の茅野遺跡は榛名山のふもとに位置し、約3500年前(縄文時代後期~晩期)の住居跡などが見つかりました。また577個もの土製耳飾りが出土しました。

 小さな円形の出土物を耳飾りと推定できるのは諸外国の先住民族に同じような形の耳飾りがあること、縄文時代の土偶の耳に同様の形の装飾が見られること、頭骨の左右にあたる位置で見つかった事例があることなどからです。

 直径1㌢以下から10㌢程度まで、多くは素焼きできめの細かい粘土が使われています。耳たぶに穴をうがってはめ込み、日常的に両耳につけていたようです。

 大きさは人生のステージと関連すると考えられ、年齢が上がるに従ってより大きなものへ取り換えていったのでしょう。つけたのは女性か男性か、あるいは両方なのかは不明です。

 577個のうち220個には文様があり、それらはすべて異なります。稲妻、渦巻きなどの文様に着目して大きく分類すると8系列に分けられ、数千点の耳飾りが出土した長野県の遺跡もしのぐバリエーションといえます。

 同じく村内の十二前遺跡でも耳飾りが見つかっています。茅野遺跡よりも500年ほど古い墓からで、出土例が少ない左右のペアと思われます。

 耳飾りをつける習慣は弥生時代以降衰退します。人々はなぜ耳飾りをつけ、後にはつけなくなったのか。稲作をはじめ新しい文化を受け入れた時期を境に、精神文化が変わっていったことと関わりがあると考えています。

(聞き手・三品智子)


 《榛東村耳飾り館》 群馬県榛東村山子田1912(問い合わせは0279・54・1133)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。200円。月(祝の場合は翌日)休み。

つのだ・しょうこ

学芸員 角田 祥子

 つのだ・しょうこ 大学院修士課程で考古学を専攻。1998年着任。茅野遺跡の発掘調査報告書・遺物編(2021年)の作成を担当した。

(2022年4月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

私のイチオシコレクションの新着記事

  • 文化学園服飾博物館 12月5日から始まる「あつまれ! どうぶつの模様」展では、動物をモチーフにした衣装や装飾品、タペストリー、帛紗などの染織品が一堂に会します。同じ動物でも地域によって表現方法や意味合いが違うので、共通点や相違点を探りながら見るのがおすすめです。

  • 松岡美術館 陶磁器が放つ美しいつやと色彩。これは、うわぐすりとも呼ばれる釉薬(ゆうやく)がもたらすものです。

  • 似鳥美術館 北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。

  • 太陽の森 ディマシオ美術館 フランスの幻想絵画画家として活躍しているジェラール・ディマシオ。彼が制作した縦9×横27㍍の巨大な作品が当館の目玉です。1人の作家がキャンバスに描いた油絵としては世界最大で、ギネス世界記録にも内定しています。

新着コラム