今月の人

片岡愛之助

楳図独特の世界観
うそか本当か、惑わす怖さ

 漫画家・楳図かずおが、自身の生い立ちを基に、自らを主人公にして創作したホラー作品「MOTHER(マザー)」。楳図が監督も務めたこの作品で、楳図本人を演じた。

 近年、様々な分野で活躍を見せるが、ホラーは初挑戦。出演依頼に最初は「無理だと思ってお断りしようとしました」という。子供の頃から彼の漫画に親しんできたものの、自分は楳図本人と似ても似つかない、との思いからだった。しかし、楳図監督から「楳図かずおという漫画家の役を演じて下さい」と言われ、出演を決めた。

 片岡演じる楳図かずおは、編集者さくら(舞羽美海(みみ))から楳図の生い立ちを本にしたいとの依頼を受ける。さくらは、彼の創作の原点に死去した母イチエ(真行寺君枝)が影響していると考え、楳図の故郷を訪れるが、取材を進めるうちにイチエの数奇な事件を知る。やがて死んだはずの母の情念が楳図とさくらを恐怖に陥れていく。

 撮影は全てロケ。楳図の仕事部屋をはじめ、漫画のファンをニヤリとさせる場面が随所で見られる。漫画を知らない人でも実感できる「楳図ワールド」だ。本にできるんじゃないかと思うほどの絵コンテを見ながら、演技指導を受けることもあった。心理を衣装で表現するなど、漫画家ならではの着眼点に驚いたそうだ。

 見どころは「息子と母の関係や愛情、その裏返し。人の気持ちの怖さ」と話す。楳図本人が、事実を基にうそにうそを塗り固めて書き上げたという物語を柔らかな表情でこう締めくくった。「どこまでがうそで本当なのか。わからないだけに怖いでしょう?」

取材・文/神谷実里
 撮影/高嶋佳代
 


プロフィール

かたおか・あいのすけ
1972年、大阪府生まれ。81年、片岡千代丸の名で初舞台。92年、六代目片岡愛之助を襲名。近年は、ドラマ「半沢直樹」や映画「劇場版 仮面ライダー鎧武(ガイム)」への出演など活動の幅を広げている。

 


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