ゲストに俳優パク・ジョンミン 11月22、23日に東京の神保町で開かれる韓国の本のお祭り「K-BOOKフェスティバル」に韓国から俳優のパク・ジョンミンがやってくる。
昨年12月6日に急逝した歌手で俳優の中山美穂さんの一周忌だった6日、ソウルで追悼イベントが開かれ、韓国のファンが参加した。韓国では、中山美穂さんが主演した「Love Letter」(岩井俊二監督、1995年)が、日本映画(実写)の観客動員数歴代1位の記録を保っていて、中山美穂さんはいまも韓国でもっとも愛されている日本の俳優だ。
ソウルの映画館「シネキューブ」であったイベントでは、中山美穂さんとキム・ジェウクさんが主演したチョン・ジェウン監督の「蝶の眠り」(2018年)が上映され、チョン監督とキム・ジェウクさんが中山美穂さんの思い出を語った。「蝶の眠り」は、遺伝性アルツハイマーを患う人気女性作家の涼子(中山美穂さん)と韓国人留学生チャネ(キム・ジェウクさん)の年の差を超えた純愛を描いた日韓合作映画だ。

チョン監督とキム・ジェウクさんは4月に東京で開かれた「お別れの会」にも出席した。チョン監督は「たくさんのファンが参列しているのを見て、こんなにも愛された俳優だったんだとあらためて実感した。ファンと一緒に泣いて悲しみを分かち合い、少し気持ちが軽くなりました」と振り返った。
キム・ジェウクさんは「僕の知らなかった若いアイドルのころからだんだん成熟していく姿が映像で流れました。終盤、『蝶の眠り』の緑のドレス姿の涼子が映し出され、本当に亡くなったと実感しました」と声を詰まらせた。
「Love Letter」は日本公開から4年たった1999年に韓国で上映された。韓国国内では98年から段階的に日本の大衆文化が開放されていったが、それまでは日本映画は映画館で見られなかったからだ。小樽と神戸を舞台にしたラブストーリーで、一人二役を演じた中山美穂さんと真っ白な雪景色が韓国の観客を魅了し、100万人超を動員するヒットとなった。いまも度々上映されている。
チョン監督は「日本映画をたくさん見てきましたが、日本の女優と言えば中山美穂さん。私たちにとって日本を象徴する存在です。『Love Letter』はいま見てもとても美しく洗練された映画。『蝶の眠り』のキャスティングでも中山美穂さんが真っ先に浮かびました」と話す。
1983年生まれのキム・ジェウクさんは韓国で「Love Letter」が公開された当時は10代。よく映画館に通っていた。「Love Letter」を最初に見たとき、「これまで見てきた映画とは違う息遣いやリズムが感じられ、日本的な感性の映画だと思った」と振り返る。

©2017 SIGLO,KING RECORDS,ZOA FILMS
チョン監督が初めて中山美穂さんに会ったのは、東京・恵比寿のカフェだった。出演を依頼する手紙を3、4枚、監督自ら慣れない日本語でつづって送った。「会った瞬間、変わらず美しいことにまず驚き、演じてもらう涼子について話し合いました。私が『涼子は病気を患ってはいるけれど強い。自分の記憶を守ろうと必死にもがく女性であってほしい』と提案すると中山美穂さんも同意してくれました」
「Love Letter」のときの短い髪型が好きという監督のリクエストに応えて、中山美穂さんは撮影前に髪を短く切った。撮影現場で昼食をしっかり食べる姿も印象的だったという。「毎回、お弁当をきれいに全部食べるのが現場で見せる体力の秘訣と感じました」とチョン監督。
キム・ジェウクさんは日本で暮らしたことがあって日本語が話せるが、最初から最後までせりふが日本語というのはプレッシャーだった。「ベテランの中山美穂さんの存在が心強かった」と話す。「時折、『Love Letter』のあの中山美穂さんと共演しているんだと不思議な気持ちにもなりました」

©2017 SIGLO,KING RECORDS,ZOA FILMS
中山美穂さんはほとんど監督の望むとおりに演じたが、終盤に意見を述べたことがあったという。チャネが久しぶりに涼子に会いに行く場面で、チョン監督は「症状で老化が進んだ涼子を撮ることを考えていたが、中山美穂さんはそこまでする必要はないのではという意見だった。いまは意見を聞いて良かったと思っています。美しいままの中山美穂さんを記憶に刻めたから」と打ち明けた。
イベントでは観客からも質問が尽きず、ともに語り合うことで、中山美穂さんを悼む時間となった。「蝶の眠り」は韓国語で「ナビチャム」。赤ちゃんが無邪気にバンザイの格好で眠る姿を指す。安らかにお眠りください。
成川彩(なりかわ・あや)
韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)を出版。新著にエッセー「映画に導かれて暮らす韓国——違いを見つめ、楽しむ50のエッセイ」(クオン)。2023年に鶴峰賞(日韓関係メディア賞)メディア報道部門大賞を受賞。
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