日本で公開されない韓国映画にもキラリと光る作品がある。逆もしかり。コミュニティシネマフェスティバルの第1弾として日韓のミニシアターの協力による「日韓映画館の旅」が昨年11月に始まり、未公開作品が見られるようになった。韓国から映画人も多数来日し、登壇する。
日本で上映される韓国のインディペンデント映画はほんの一握りで、韓国を拠点に活動している映画ライターの筆者ももどかしい思いだった。2025年は日韓国交正常化60周年の節目の年でもあり、まず日本で「日韓映画館の旅」がスタート。11月に大阪と福岡で開催され、今月から東京でも始まる。韓国でも今年、日本の未公開作品が上映される予定だ。
韓国側の仕掛け人は韓国のミニシアター「アートナイン」の企画・広報を総括するジュヒさん。韓国芸術映画館協会の副会長も務める。ジュヒさんによると、2019年に埼玉で開かれた「全国コミュニティシネマ会議」に招かれたのが交流のきっかけ。ジュヒさんは「日本も韓国もミニシアターの経営が厳しいのは同じ。互いに参考になる部分や協力できる面があると実感した」と振り返る。
韓国のミニシアターは全国一斉に公開することが多いが、日本では地域ごとに時期をずらす。ジュヒさんは「ずらした方が宣伝効果があり、全体として長く上映期間が確保できる。韓国でも参考にしたい」と話す。
未公開作品を中心に双方で上映しようと話は順調に進んだが、国を越えての上映は字幕を付ける必要があり、費用がかかる。ジュヒさんはKOFIC(韓国映画振興委員会)に支援を求め、快諾を得た。「日韓の民間主導で、政府の力も借りて実現したことに大きな意義を感じます」。ジュヒさんは配給も担当。三宅唱監督、シム・ウンギョン主演の「旅と日々」(2025)は韓国で観客数6万人を超えるヒットとなっている。渋谷の映画館ユーロスペースで3月1日、三宅監督の「夜明けのすべて」を上映後、ジュヒさんのトークがあり、韓国のミニシアターや日本映画の配給についても語る。

「長孫-家族の季節」
「日韓映画館の旅」で上映される韓国のインディペンデント映画5本のうち3本は韓国芸術映画館賞受賞作で、オ・ジョンミン監督「長孫-家族の季節」(2024)は、大邱(テグ)の田舎で豆腐工場を営む家族を描いた。法事のために家族3代が集まり、伝統的家族観と家族の葛藤が垣間見える作品。「長孫」は長男の長男、または最年長の男性の孫を指し、家系の代を継ぐ上で重要な地位を占める。祖父母は長孫のソンジンを溺愛しているが、ソンジンはソウルで俳優として活動していて家業を継ぐ気がない。「長孫」は釜山国際映画祭で3つの賞を受賞したのをはじめ、韓国で多くの賞を受賞した。ユーロスペースで3月1日午前10時からの上映後、監督のトークがある。

「Mr.キム、映画館へ行く」
映画館を撮ったドキュメンタリーも2本上映される。キム・ドンホ監督の「Mr.キム、映画館へ行く」(2025)は、現在88歳のキム監督がコロナ禍の余波が続く2022~23年、国内外の映画人や映画館を訪ね、「映画館とは?」という問いを投げかけた。キム監督は釜山国際映画祭創設者の一人で、長年にわたって執行委員長を務めた。その人脈を生かし、世界の著名映画人が多数出演するのも見どころ。ユーロスペースで2月28日午後4時25分からの上映後、監督のトークがある。
「日韓映画館の旅」はユーロスペースで2月28日から3月6日まで、菊川(墨田区)の映画館Stranger(ストレンジャー)で2月27日から3月12日まで開催される。詳細は公式ホームページ(http://jc3.jp/ccfes/)。
成川彩(なりかわ・あや)
韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)を出版。新著にエッセー「映画に導かれて暮らす韓国——違いを見つめ、楽しむ50のエッセイ」(クオン)。2023年に鶴峰賞(日韓関係メディア賞)メディア報道部門大賞を受賞。
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