目利きのイチオシコレクション

中国陶磁【上】 静嘉堂文庫美術館

官窯民窯の至宝 あわせ持つ

「青磁香炉」南宋官窯 南宋時代(12~13世紀)

「青磁香炉」南宋官窯 南宋時代(12~13世紀)

  • 「青磁香炉」南宋官窯 南宋時代(12~13世紀)
  • 国宝「曜変天目(稲葉天目)」建窯 南宋時代

 新石器時代から清朝まで、中国陶磁は途絶えることなく作られてきました。特に宋時代以降は、皇帝の命で設けられた「官窯(かんよう)」と、海外貿易用の陶磁を焼いた「民窯」の二つの潮流が生まれました。

 官窯の陶磁は、宮廷内でひそかにめでられてきましたが、1911年の辛亥(しんがい)革命で清朝が滅亡すると、市場に流出します。三菱第4代社長の岩崎小彌太(こやた)(1879~1945)は、戦前にこの官窯に着目し、研究者や美術商と一体となって収集。日本に伝来する民窯の最高級品とあわせて、世界屈指のコレクションを築いたのです。これを見ることができるのが、静嘉堂(せいかどう)文庫美術館です。

 「青磁香炉」は南宋官窯の作品です。透き通るような青を、雨が過ぎ去った後の空の色にたとえて「雨過天青」と表現する人もいます。二重、三重に入った「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる細かいひびには、官窯の技術の高さが表れている。これぞ中国の本流が生んだ至宝です。

 一方、「曜変天目」は、南宋時代の民窯の作品。鎌倉・室町時代に伝来し、代々珍重されてきた日本の国宝です。国宝や重文に指定されている中国陶磁の多くが、こうした茶道具の伝来品です。そこには、日本人が茶の湯の文化の中で、中国陶磁を重要視してきたという、日本ならではの「中国陶磁観」が見て取れます。

(聞き手・渡辺香)


 どんなコレクション?

 和漢の古典籍や絵画、彫刻など幅広い美術品を集めた三菱第2代社長の岩崎彌之助(1851~1908)と、中国陶磁を系統的に収集した息子の小彌太によるコレクション。これらをもとに1992年、美術館が開館した。国宝7点、重要文化財84点を含む、約20万冊の古典籍と、約6500点の東洋古美術品を所蔵する。

 「青磁香炉」と「曜変天目」は、6月17日から8月13日まで開催の「珠玉の香合・香炉展」で展示する。

《静嘉堂文庫美術館》 東京都世田谷区岡本2の23の1。午前10時~午後4時半(入館は30分前まで)。1000円。7月17日を除く(月)と7月18日休み。問い合わせは03・5777・8600。

川島公之さん

美術商 川島公之さん

かわしま・ただし 東京・京橋の東洋古美術の老舗・繭山龍泉堂代表取締役。東京美術商協同組合理事。日本陶磁協会理事。中国陶磁に精通し、個人の収集のほか、美術館との仲介にも携わる。朝日カルチャーセンターで講師も務めた。

(2017年6月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

「目利きのイチオシコレクション」の新着記事 一覧を見る
漆芸【下】 東京国立近代美術館工芸館

漆芸【下】 東京国立近代美術館工芸館

江戸時代まで漆芸は、寺院や大名の注文を受け、職人が分業で制作していましたが、明治になると、作り手が自ら発想し、全工程を手がける作家活動が盛んになります。

漆芸【上】 首里城公園

漆芸【上】 首里城公園

漆芸は、漆の樹液を塗料として用い、金や貝で装飾を施す美術工芸品です。漆の木は、日本から東南アジアまでのモンスーン地帯にのみ生育します。

色絵【下】 石川県九谷焼美術館

色絵【下】 石川県九谷焼美術館

今回は、色絵の中でも「再興九谷」に焦点を当てて紹介します。

色絵【上】 戸栗美術館

色絵【上】 戸栗美術館

色絵は陶磁器に赤や緑、黄などで上絵付けし、低温で焼成した焼き物の総称です。中国様式を踏襲し、日本では1640年代以降、有田の伊万里焼や、京都の京焼など各地で盛んに作られました。

新着コラム 一覧を見る

ロゴ散歩

国立アイヌ民族博物館

北海道に先月オープンした、東北以北で初の国立博物館。

「眼をとじて」

美博ノート

「眼をとじて」

フランス象徴主義を代表するオディロン・ルドンは、1890年ごろにその作風の転換期を迎える。

山の絵画 安曇野山岳美術館

私のイチオシコレクション

山の絵画 安曇野山岳美術館

山好きだった亡父・水上巌が37年前、北アルプスのふもとで山の絵を鑑賞してほしいという思いから開いた小さな美術館です。山に入って描く山岳画やふもとから描いた風景画など約200点を収蔵しています。

川崎大師平間寺薬師殿(旧自動車交通安全祈祷殿)(川崎市)

建モノがたり

川崎大師平間寺薬師殿
(旧自動車交通安全祈祷殿)(川崎市)

川崎大師境内の南端で異彩を放つ薬師殿は、建築史家で長年にわたり古社寺保存に携わった大岡實さん(1900~87)が設計した

お知らせ(更新情報)
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、開催を中止・延期するイベント、プレゼントがございます。

♪プレゼント♪

♪プレゼント♪

♪プレゼント♪

♪プレゼント♪

♪プレゼント♪


♦お知らせ

中止を決定したものにつきましては、その都度情報を更新し、公開を取り下げます。
なお、中止・延期となったイベント等の詳細につきましては主催者にお問い合わせいただきますようお願いいたします。
マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。