税理士が相続税の悩みにお答えします
税理士の森田貴子さんが相続税にまつわる様々なお悩みにお答えします。今回の相談者は、遺産の半分が相続税でとられるのではないかと不安になっています。
80代の母親が亡くなり、私と妹、弟の3人で現金2000万円と評価額2000万円の不動産を相続することになりました。「遺産の半分は相続税でとられる」なんて話も聞いたことがあるのですが、実際はどれくらい払わないといけないのでしょうか。(50代女性)
結論から言うと、ご相談のケースだと相続税がかからない可能性が高いので、ご安心ください。
日本の相続税には「基礎控除」という制度があります。
これは「遺産が一定の金額以下なら相続税はかかりません」という非課税枠のようなものと考えてください。
基礎控除額は「3000万円+(600万円×相続人の数)」です。つまり、相談者の方と妹さん、弟さんの3人で相続される場合は、基礎控除額は3000万円+(600万円×3人)=4,800万円になります。
相談者の遺産総額は現金2000万円と不動産2000万円を合わせた4000万円ですから、基礎控除額4800万円を下回っています。そのため、相談者の方のケースは相続税が発生しない可能性が高いです。つまり、税金の心配はなさらなくて大丈夫です。
「相続税で遺産の半分がとられる」って本当?
「遺産の半分が税金で取られる」ということは非常にまれです。
たしかに相続税の最高税率は55%です。それだけ聞くと高いように感じるかもしれませんが、この税率は遺産総額がとても大きい場合にだけ適用されるものです。具体的には基礎控除額を引いた後の遺産総額が6億円(相続人が複数いるときは一人当たりの法定相続分に応じる取得金額が6億円)を超えるような場合に適用されます。
相続税の税率は、基礎控除額を引いた金額に対し、法定相続分どおりに遺産を分けたと仮定した場合の各相続人の遺産額の大きさに応じて最小10%から最大55%までの8段階に分かれています。遺産が少なければそれに応じて税率も低くなります。こちらは国税庁が公表している相続税の速算表です。

相続財産の調査は重要
今回の相談者について「相続税はかからない」とは言いましたが、気づいていない遺産がないのかのチェックは必要です。
遺産には預貯金や不動産だけでなく、様々なものが含まれます。
例えば、相談者のお母さまのご趣味で書画や骨董などの美術品や茶道具、宝石・貴金属があればそれも相続財産として計算されます。相続人の把握していない財産や気付いていない財産があるときは、その総額が基礎控除の金額を超えてしまい、相続税が発生することも考えられます。念のため全ての相続財産をしっかり調査することをおすすめします。
一方でプラスの財産だけではなく、借入金やクレジットカードの未払金などのマイナスの財産はございませんか? 借入金やお葬式の費用は相続財産から控除することが可能です。また、現金のなかでも生命保険金の一定額など非課税となる財産もあります。遺産をどのように分割するかという点や、税金計算では遺産が減る材料になりますのでプラスの財産だけでなくマイナスの財産や非課税の財産も漏れなく確認しましょう。
相続税や贈与税の仕組みは複雑 税理士に相談を
相談者のケースでは遺産総額が基礎控除額に達していないので、特に気にする必要はありませんが、相続税を考える上で「特例」の適用も検討する必要があります。
代表的なのは、自宅の相続税評価です。土地の状況によりいろいろな調整率を適用することで評価額がかなり変わります。例えば、亡くなった方がその直前に住んでいたり、貸していたりした土地、事業を営んでいた不動産に関しては相続税が大幅に減額できる特例が適用できるケースがあります。
ほかにも生前贈与も、相続税に影響を与えます。
たとえば、生前贈与は110万円までは非課税なのは有名な話ですが、贈与してから一定期間内に贈与した人が亡くなった場合、その贈与はなかったこととされ、相続税の対象となります。
その期間は「3年」だったのですが、「7年」に変更され、2024年1月以降の贈与から適用されることになりました。
また、これまでは使い勝手が悪いと言われていた「相続時精算課税制度」に基礎控除枠が2024年1月から新設され、生前贈与の有効な方法として注目されています。
このように税制は定期的に改正されていくため、そのたびに知識をアップデートしていくのは大変です。
ある制度を利用すると他の制度が適用できなくなることもあり、実際の相続税額の計算は簡単ではありません。何か不明な点があれば、税理士に相談してみるのが一番安心です。専門家によるサポートを受けることで、適切な手続きがスムーズに行えます。
(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています。質問は筆者の実体験を元にした創作です)
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