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マリオンTIMES

浪曲×小劇場演劇でエンターテインメント旋風を
玉川奈々福さん、広沢美舟さんがラッパ屋のリーディング公演「阿呆浪士」に出演

浪曲師の玉川奈々福さんと曲師(三味線弾き)の広沢美舟さんが劇団「ラッパ屋」のリーディング公演に出演する。演目は、浪曲や講談でおなじみの赤穂浪士を下敷きにした「阿呆(あほう)浪士」。1998年に上演された際には国本武春さん、2020年には奈々福さんが出演し、浪曲と縁が深い戯曲だ。

ラッパ屋は1984年旗揚げの老舗劇団。主宰の鈴木聡さんが劇作と演出を担ってきた。「阿呆浪士」の初演は94年。そのとき浪曲師は登場しなかったが、98年の再演時に浪曲のスタイルを取り入れる演出を試みた。出演したのが武春さんだった。

「浪曲師としての武春さんの超一流の技量、そしてピカイチのエンターテインメント魂を借りて、演劇の可能性を広げたかった」と鈴木さん。再演は東京・新宿のシアタートップスという小さな劇場だ。「当時の演劇が、芝居好きだけを相手に閉じている印象があって、可能性を狭めていると感じていた。狭い劇場の四角い枠(プロセニアム)の外、客席はもちろん、さらにその外の社会とつながりたいと考えたとき、お客さんと自在にコミュニケーションを図って物語の世界に引き込む浪曲という芸が魅力的に映った」

「阿呆浪士」の主人公は、魚屋の八。八はもてたいがために自らを赤穂浪士と偽るが、血判状を偶然手に入れたことから騒動が大きくなり、討ち入りに加わらざるを得なくなる。一方、大石内蔵助は浪人となった元赤穂藩の武士たちが家庭を築いてつましくも幸せに暮らす姿を知り、討ち入りを諦めようとする。

浪曲師が担うのは狂言回し。三味線の音にのって物語を進める。奈々福さんは2020年のパルコプロデュース版(演出はラサール石井さん)に出た。語りと三味線を1人で務め、さらに主役との絡みがあり,踊りまで。奈々福さんは「初演から30年経っている作品だけど、いまの方が時代と響き合っている。巻き込まれる庶民の感情、大石が断念する過程が面白い」。今回の公演は、曲師の美舟さんとともに舞台にあがる本来の浪曲に近い形で、語りに専念する。「言葉をしっかり届けるリーディング公演なので、登場人物の感情がより際立ち、お客様に共感してもらえると稽古をしていて感じた」

浪曲の口演では、浪曲師の一挙手一投足を見つめ、語りに即興で音を紡ぐ曲師だが、今回の舞台では大勢の俳優が登場と退場を繰り返し、せりふを言う。つい言葉に反応したくなっても演出で三味線を鳴らせない場面もありそう。美舟さんは「芝居とはいえリーディング公演なので語りが先行。そういう点では浪曲と共通しているし、浪曲の三味線が出演する意味があると感じている」

「阿呆浪士」は初演時に劇作家の登竜門である岸田國士戯曲賞の候補作に挙げられたラッパ屋の代表作で、劇団としての再演は28年ぶり。いま一度上演する理由について、鈴木さんは「芝居の原点を確認したい」と話す。「僕らは働く大人のためのエンターテインメントをつくりたいと思っているけれど、時世を意識するとテーマがまじめでシリアスになってしまう。『笑ってばかりもいられない』と。でも、そんな時代だからこそ、演劇の、エンターテインメントのエネルギーを実感したいと。そう考えたら『阿呆浪士』だった」

公演は14日午後1時半、午後6時半、15日午後1時半(いずれも開演時間)。東京・新宿の紀伊国屋ホール。5千円。ほかに30歳以下3千円、20歳以下2千円(年齢が確認できる身分証明書持参)。問い合わせはサンライズプロモーション(0570・00・3337/正午から午後3時まで)。

左から広沢美舟さん、鈴木聡さん、玉川奈々福さん

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