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街の十八番

萬年堂本店@銀座

高麗餅(もち)由来の御目出糖(おめでとう)が大黒柱

銀座コアビル横のアーケードにある店舗前に立つ樋口喜之さん。工場は浅草橋にある
銀座コアビル横のアーケードにある店舗前に立つ樋口喜之さん。工場は浅草橋にある
銀座コアビル横のアーケードにある店舗前に立つ樋口喜之さん。工場は浅草橋にある 蒸し直すと小豆の香りや食感が増す「御目出糖」は1個281円、6個箱入り1858円~

 京都・寺町で1617(元和3)年に創業。「亀屋和泉」の屋号で、御所などに菓子を納めた。維新後の東京遷都に伴い1872(明治5)年、東京・八重洲に移転、今の屋号となった。戦後から銀座を拠点にしている。

 名物の「御目出糖」は、江戸・元禄期から作り始めた。豊臣秀吉の朝鮮出兵をきっかけに、朝鮮から伝わった高麗餅に由来している。小豆と餅粉を使い見た目が、赤飯に似ていることから、明治中頃に名づけた。こだわりは、渋を残して小豆のうまみを出した餡(あん)。もっちりした食感と上品な甘さ、縁起のいい品名でひいきが多い。

 現当主の樋口喜之さん(49)は13代目。大学卒業後はアパレル業界に就職したが、離れてみると銀座の中で奮闘する家業や父親が格好よく見えた。父の体調不良を機に家業に入り、職人として修業を始め、30歳で店を継いだ。

 喜之さんが考案した、ドライフルーツの羊羹(ようかん)「百果」なども好調。「銀座で店をやれるのは誇り。基本となる餡や、大黒柱の御目出糖を大事に作り続けていきたい」と語る。

(文・写真 清水真穂実)


 ◆東京都中央区銀座5の8の20(TEL03・3571・3777)。午前11時~午後8時。不定休(8月20~26日夏季休業)。銀座駅。

(2018年8月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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