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ひとえきがたり

修善寺駅
(静岡県、伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線)

和で新装 伊豆の玄関口

海外の旅行ガイドで二つ星を獲得した修善寺。外国人観光客向けに駅の表示も四カ国語で書かれている
海外の旅行ガイドで二つ星を獲得した修善寺。外国人観光客向けに駅の表示も四カ国語で書かれている
海外の旅行ガイドで二つ星を獲得した修善寺。外国人観光客向けに駅の表示も四カ国語で書かれている 修善寺駅

 温泉と海山の自然美を誇る伊豆半島。その玄関口の駅は、8月の完成をめざして建て替え工事の真っ最中だ。

 改札を出ると木の香りが鼻をくすぐる。天井の杉板は地元・天城産だ。4月には、建て替えの主な目的の一つ、駅の南北をつなぐ通路が完成した。北口広場には修善寺温泉の竹林の小径(こみち)をイメージした竹や、伊豆の春を彩る桜などの緑が多く採り入れられている。

 伊豆箱根鉄道技術課の池谷吉治さん(66)が「新駅舎のこだわりは地場産のものを使うことです。外国人観光客も増えているので、和のテイストも意識しました」と説明してくれた。

 構内で名物のあじ寿司(ずし)を売る「舞寿し」店主の武士東勢(たけし・とうせい)さん(53)は、地域活性化をめざすNPOの理事長として駅とその周辺の整備に参加している。「玄関口としてのおもてなしの気持ちを大切に活動しています」

 事業が本格化した2010年、伊豆市は武士さんら市民の声を反映させるための検討会を設置した。その夏にはデザイン案のコンテストを開催。風光明媚(めいび)な伊豆の自然をコンセプトにした多くのアイデアが寄せられ、新駅のデザインに採り入れられた。

 「駅という箱ができたら次は中身。市場や祭りなどのイベントを開きたいですね」と武士さんは期待を膨らませる。

 北口から南口へ。通路を2羽のツバメが通り抜けていった。

文 岩本恵美撮影 上田頴人 

沿線ぶらり

 伊豆箱根鉄道駿豆線は三島駅(静岡県三島市)と修善寺駅(伊豆市)を結ぶ19.8キロ。

 修善寺駅からバスで8分の修善寺温泉では、6月22日(日)まで「花しょうぶまつり」を開催。鉢植えを展示。修善寺虹の郷(中学生以上1200円)の花しょうぶ園では約300種7000株のハナショウブが見ごろだ。問い合わせは市観光協会修善寺支部(0558・72・2501)。

 北条氏ゆかりの願成就院へは伊豆長岡駅から徒歩15分。国宝に昨年指定された鎌倉時代初期の仏師、運慶作の仏像5体を間近で見ることができる。拝観料400円。(火)(水)休み。

 

 興味津々
 
 

 改札横の舞寿し(TEL0558・72・2416)は、修善寺駅で40年以上続く駅弁屋。名物の武士のあじ寿司(1100円)は、アジのほか松崎の桜葉、天城のワサビなど伊豆産の食材にこだわった手作りの駅弁。観光客だけでなく、地元の人たちも買いに来るという。

(2014年6月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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