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ひとえきがたり

土合(どあい)駅(群馬県、JR上越線)

マイカー登山でも駅寝

10月の3連休の前夜、まだ余裕がある待合室も、午後8時45分着の下り最終列車が過ぎると四隅はすべて陣取られた
10月の3連休の前夜、まだ余裕がある待合室も、午後8時45分着の下り最終列車が過ぎると四隅はすべて陣取られた
10月の3連休の前夜、まだ余裕がある待合室も、午後8時45分着の下り最終列車が過ぎると四隅はすべて陣取られた 地図

 「寝てるので静かにしてもらえませんか」。取材中、フリースを着込んだ若い女性に叱られた。夜の8時前。待合室や改札前には、マットを床に敷き寝袋に身を包んだ人が20人ほど。傍らには大きなザック。寝息や高いびきも聞こえる。

 谷川岳をはじめとする上越国境の山々への玄関口。シーズンともなると、東京から夜行列車で訪れ、夜明けまで駅で仮眠をとる登山者たちでにぎわった。

 「30~40年前は足の踏み場もないほどだった」と山岳ライターの石丸哲也さん(62)。一ノ倉沢や幽ノ沢で岩登りをするため仕事が終わった土曜の夜、上野駅を10時過ぎに発つ夜行に飛び乗る。土合駅着は午前3時前。寝場所を確保しようと「日本一のモグラ駅」の異名をとる486段の階段を駆け上がった。「駅側も暖房を効かせて待っていてくれたよ」

 1985年、夜行列車が廃止。この年の秋には関越道の前橋~湯沢(新潟県)間が開通し、マイカー登山に拍車をかけた。谷川岳登山指導センターの主任指導員、須藤真さん(56)によれば、車で来て駅に泊まる人もいるという。神奈川県の高校教師、木村明之さん(36)もその一人。山岳部の顧問として、生徒と一緒に泊まったこともあるそうだ。「トイレも水もあるうえ、平ら。快適です」

 翌朝6時半、昨夜の女性に無礼をわびようと駅へ。が、人の姿は一人もなかった。ステーションビバーク(駅寝)は、夜も朝も早い。

文 岡山朋代撮影 馬田広亘 

沿線ぶらり

 JR上越線は、高崎駅(群馬県高崎市)と宮内駅(新潟県長岡市)を結ぶ162.6キロ。列車は宮内駅の隣の長岡駅(信越線)まで乗り入れる。

 渋川駅からバスで20分の水沢観音の近くには水沢うどんを供する13店が軒を連ねる。参拝客にふるまったのが始まりという。問い合わせは水沢うどん商標登録店組合(大沢屋、0279・72・3295)。

 沼田駅からバスで20分のロックハート城(TEL63・2101)は、英国から移築した石造りの古城。午前9時~午後5時。1000円。城を背景にドレスやタキシード姿で記念撮影も(60分2500円)。

 

 興味津々
谷川岳ロープウェイ
 

 駅から徒歩20分ほどで谷川岳ロープウェイ(往復2060円)の乗り場へ。10分で天神平に到着する。リフト(同720円)で標高約1500メートルの天神峠展望台まで上がると、谷川岳や朝日岳、榛名山や赤城山などの眺望を楽しめる。

(2014年10月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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