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ひとえきがたり

東京駅(東京都、JR東海道線ほか)

ヒツジはドームでくつろいで

柱に沿って見上げると、円形の枠に収まった干支の動物たちと目が合う
柱に沿って見上げると、円形の枠に収まった干支の動物たちと目が合う
柱に沿って見上げると、円形の枠に収まった干支の動物たちと目が合う 地図

 レンガ造りの丸の内駅舎。南北のドーム上部に設計者、辰野金吾が自らデザインした干支(えと)のレリーフが8枚ずつはめ込まれている。戌(いぬ)は西北西、辰(たつ)は東南東といった具合に8種の動物が方角を示す。今年の主役を探すと、南南西に脚を折りたたんだヒツジがくつろいでいた。

 昨年の駅開業100周年を前に、丸の内駅舎の完全復元工事が行われた。1945年の空襲で焼け落ちたドームも3年前、建設当時の姿をよみがえらせた。

 「ドームにあれほど壮麗な装飾があったとは」という辰野智子さん(53)は金吾のひ孫に当たる建築家だ。「書き割りのようにならないかと心配だったけど、昔の技法を再現した本気の復元ですね」

 5年半を費やした工事には全国から腕利きの職人が集められた。ドームの復元に携わった鹿島の下田哲男さん(38)は「設計図のない仕事は初めて」と振り返る。干支のレリーフの手がかりも古い写真だけ。動物の骨格や筋肉の付き方を研究し、美術の専門家と修正を重ねた。「しんどかった。でも完成したドームを見上げたら、全部吹き飛びました」

 復元が完成した直後、レリーフには欠けている四つの干支が佐賀県の武雄温泉で見つかり話題を呼んだ。東京駅の翌年に完工した金吾設計の楼門。天井の四隅に東西南北を表す卯(うさぎ)・酉(とり)・午(うま)・子(ねずみ)が透かし彫りになっている。なぜここに?

理由はわからない。金吾の伝記を書いた大塚菜生さん(47)は「金吾のちゃめっ気かな。故郷の唐津に近い武雄と東京駅に、なんらかのつながりを持たせたかったのかもしれません」

文 中村茉莉花撮影 馬田広亘 

沿線ぶらり

 JR東京駅は東海道線、山手線などの在来線や東海道・東北新幹線が乗り入れ、東京メトロ丸ノ内線に乗り換えができる。

 上野駅から徒歩5分の上野動物園(TEL03・3828・5171)では、1月18日まで「干支(えと) 展」を開催。暮らしの中の人とヒツジのかかわりを紹介し、羊毛で作られたアート作品などを展示する。入園料600円、65歳以上300円、中学生200円。午前9時半~午後5時。

 烏森神社(TEL03・3591・7865)は新橋駅から徒歩3分。2月1日~3日の節分祭特別参拝では、干支のヒツジをあしらった「干支伴天(はんてん)」を授与する(初穂料1千円から)。

 

 興味津々
ヒツジのレリーフ
 

 未(ひつじ)=写真は鹿島JV提供=をはじめレリーフの美しいデザインは、英国に留学した辰野金吾が、講師の指導で建築装飾の写生を繰り返したたまものだろうと辰野智子さん。「絵を学びに来たんじゃないと本人は怒ったらしいけど」

(2015年1月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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