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ひとえきがたり

三才駅(長野県、JR信越線)

3歳になったらいらっしゃい

主役を抱きかかえた小宮さん一家をパチリ。時には野生のイノシシやキジも親子で(?)やってくるそうだ
主役を抱きかかえた小宮さん一家をパチリ。時には野生のイノシシやキジも親子で(?)やってくるそうだ
主役を抱きかかえた小宮さん一家をパチリ。時には野生のイノシシやキジも親子で(?)やってくるそうだ 地図

 雪の晴れ間の寒い朝。親子連れが入れ代わり立ち代わりやってくる。「3歳詣で」の家族たちだ。

 リンゴ畑と住宅が混在する静かな地域がにぎやかになったのは、7年ほど前。近所に住む太田秋夫さん(63)によると、名古屋市の商業施設が開館3周年記念に駅を広告に使ったのがきっかけだという。3歳の子の撮影スポットとして、知る人ぞ知る駅になった。

 2011年、太田さんらは「ウェルカム三才児プロジェクト」を発足。週末は駅前で子どもたちに駅長の制帽を貸し出し、写真を撮る。土日や祝日は1日平均40組、連休は80組が訪れる。駅舎はさながら保育園。人だけじゃない。全国に離れて暮らすゴールデンレトリーバーの兄弟11匹の誕生日会もあった。

 東京都調布市の小宮さん一家はこの日で3度目。8歳と5歳のお姉ちゃんも3歳の時に撮影した。雪に夢中の末っ子、杏菜ちゃんに「こっち向いて」「帽子を上げて」と大人たちは必死だ。

 駅は1958(昭和33)年に開業。「三才」は地名だが、由来は馬の産地だったため三歳馬にちなむとも、諏訪大社系列の御射山(みさやま)社にちなむともいわれる。

 14日、北陸新幹線開業に伴い、JR信越線の長野駅と妙高高原駅間は第三セクター、しなの鉄道北しなの線になる。三才を子どもの聖地にしたい、と太田さん。「子どもの健やかな成長を願う駅があってもいいですよね」

文 塩見圭撮影 浅川周三 

沿線ぶらり

 JR信越線は、篠ノ井駅(長野市)~新潟駅(新潟市)間と高崎駅(群馬県高崎市)~横川駅(同県安中市)間の計250.3キロ。しなの鉄道北しなの線は長野駅(長野市)と妙高高原駅(新潟県)を結ぶ37.3キロ。

 14日午前9時から、三才駅で北しなの線開業記念行事。しなの鉄道のジオラマ展示や鉄道グッズの販売など。問い合わせはプロジェクト事務局(026・296・3311)。

 長野駅からバスで15分、善光寺で4月5日から御開帳。妙高高原駅から車で5分、いもり池では4月末~5月上旬、10万株のミズバショウが咲く。

 

 興味津々
 

 ボランティアの常駐は冬季を除き、土日の午前10時~午後3時。13歳、23歳、33歳から123歳まで記念撮影できるよう駅名標の隣にかざすプレートを用意している=写真。友だちと合計の年齢を撮る人も。

(2015年3月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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