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建モノがたり

ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋(大阪市中央区)

風はらむ帆 水都にたゆたう

夜はライトアップされ、やわらかい光に包まれる
夜はライトアップされ、やわらかい光に包まれる
夜はライトアップされ、やわらかい光に包まれる 入り口付近の壁は水面のゆらぎをイメージしたデザイン

ブランド店が立ち並ぶ目抜き通りに浮かび上がる白い帆? 街中の「船」にはどんな意味があるの?

 昨年オープンした仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」(LV)店舗の印象的な外観は、建築家の青木淳さん(64)が手がけた。

 青木さんは1999年の名古屋を皮切りに、東京やニューヨーク、香港のLV店舗の外装設計に携わった。

 ブランドイメージを伝えるためにデザインを統一するという考え方もある一方で、LVは「その土地ならでは」を重視すると青木さんは話す。

 「旅行用トランクから発展したブランドなので、訪れた場所を楽しむ発想があるのでしょう」

 大阪らしさとは何か、考えた。

 古くから港が開け、水運を背景に発達した商都……イメージは「天下の台所」といわれた時代、江戸との貨物輸送に行き来した「菱垣廻船(ひがきかいせん)」にたどり着く。

 「何隻もの和船が港を出入りする風景です」

 風をはらんだような10枚の「帆」は曲面ガラス計403枚を使用。表面に柄をプリントすることで帆布のような質感を出した。この柄はLVのバッグや小物などに使われる「エピ(麦の穂)」というパターンを組み合わせている。

 しかし、建物は夜になると照明で照らされ、ガラスの裏の支持体が透けて見えてしまう。

 支持体も含めてきれいに見せることに苦心し、何度も負荷を計算し直して「帆」とのデザインを調和させた。

 「土地に蓄積された歴史やイメージに光を当てながら、今の時代に必要な軽やかさも表現しました」と青木さんは話す。

 風をはらんだ帆船は、一時忘れられた「水都」復興をめざす街をゆったりと行き来しているようだ。

(小森風美、写真も)

 DATA

  外装設計:青木淳建築計画事務所(現AS)
  階数:地上7階、地下1階
  用途:店舗、レストラン、アートスペースなど
  完成:2020年

 《最寄り駅》 心斎橋


建モノがたり

 大阪浮世絵美術館(問い合わせは06・4256・1311)は心斎橋筋商店街の中にありながら、江戸期の名品を鑑賞できる。8月29日(日)まで企画展「巨匠の愛した北斎、広重」を開催中。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。1千円。(祝)(休)を除く(月)休み。

(2021年4月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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