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建モノがたり

洗足学園音楽大学 シルバーマウンテン(川崎市高津区)

学園の顔にメッセージ込め

外装は長方形や台形のステンレス製パネル約8千枚で覆われている。夜は毎月色を変えたLED照明でライトアップされる
外装は長方形や台形のステンレス製パネル約8千枚で覆われている。夜は毎月色を変えたLED照明でライトアップされる
外装は長方形や台形のステンレス製パネル約8千枚で覆われている。夜は毎月色を変えたLED照明でライトアップされる 1階ホールロビー。湾曲した壁に沿った木製ベンチなどインテリアも押野見さんのデザイン。事務棟との間はガラス屋根をかけて連結した

学園ゲートを入ると目の前にそびえる銀色の山。いったい何? なぜこんな色と形にしたの?

 洗足学園創立90周年事業にあたって、もともとあったような四角い校舎を建て直す構想も当初はあった。しかし、以前から学園と縁のあった建築家の押野見邦英さん(79)は、「学園の顔となる絶好の場。未来へのメッセージ性のある建物にしてはどうか」と提案。大学側と検討を重ねた結果、演奏会場としても使えるリハーサル室を建てることが決まった。

 大事にしたのは「自由で楽しい」雰囲気。「外部に向け『おいでよ』というジェスチャーを感じさせるよう形や色を仕組んだ」と押野見さん。360度どこから見ても表情が違う形は、クラシックだけでなくジャズ、ロック、アニメソングなど、多彩なコースが設置された大学の多様性とも呼応する。

 リハーサル室は3フロアに一つずつ。上下に振動が伝わらないよう二重の床の間に防振材を施した。さらに側面のコンクリート壁を垂直方向に大きな波形にして音を拡散。吸音カーテンで残響時間を調節し、「和太鼓のダイナミックさからチェンバロの繊細さまで」対応する。「学生らの演奏機会が増え、より質の高いものになった」と副学長の前田雄二郎さん(40)は話す。プロのオーケストラの練習用に貸し出すこともあるという。

 隣接する赤が基調の建物は、事務棟の「eキューブ」。若者たちの創造力をかき立てる狙いで、外壁には珍しい色調を取り入れた。学園の外から見ても目立つ2棟は、今や地域のランドマーク。近くを走るJR南武線のロゴマークにも取り入れられている。


(斉藤由夏、写真も)

 DATA

  設計:k/o design studio、KAJIMA DESIGN
  階数:地下1階、地上2階
  用途:リハーサル室兼演奏ホール
  完成:2013年

 《最寄り駅》 溝の口


建モノがたり

 学園ゲート正面にあるカフェ、キャトルールワッフル(問い合わせは044・948・7417)は発酵生地のワッフルが人気。生クリームやアイス、果物を添えたスイーツ系のほか、サラダ付きワッフルプレートなど食事メニューも豊富。学生や近隣住民が集う。午前11時~午後6時。(月)休み。

(2021年5月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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