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建モノがたり

中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区)

塔博士の「第1子」 一新70歳

中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区)
塗装は完成時から現在まで銀色。
航空法では60メートル以上の塔は赤白塗装が義務だが、
規定前に完成していたことなどから例外となっている
中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区) 中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区) 中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区) 中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区) 中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)(名古屋市中区)

 今年で開業70年、名古屋人に愛されるランドマーク。
 あって当たり前のタワーだが、地元出身の記者も知らないことが多かった。

 

 東京タワー(333メートル)は1958年の完成当時、パリのエッフェル塔を抜いて世界一になった。が、それより先に「東洋のエッフェル塔」と呼ばれたのが180メートルの中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)だ。日本初の集約電波塔として54年6月に開業した。

 「当時の名古屋人の鋭い先見性がありました」と、名古屋テレビ塔常務の若山宏さん(63)は胸を張る。国内テレビ放送の開始は東京が最も早かったが、各放送事業者が自前の施設から電波を送信、放送局ごとに受信アンテナの向きを合わせる苦労があった。名古屋では放送開始前に電波の集約化を計画、地元経済界も出資してテレビ塔建設が決まった。

 設計者の内藤多仲(たちゅう)(1886~1970)は東京タワーの設計者でもあり、「塔博士」と呼ばれる。大阪・通天閣やさっぽろテレビ塔など全国に生み出した博士の塔は「タワー6きょうだい」といわれ、名古屋は一番年上なのだ。

 旧名古屋テレビ塔は地下鉄名城線をまたぐように立つ。建設当時すでに地下鉄計画があったため、基礎は地下6メートルまでしか打たれていない(ちなみに東京タワーは15メートルまで)。風や地震など横からの力に耐えるため建屋を下方に造り重心を低くした。さらに塔の脚部に架けた対角線状のコンクリートアーチも、建屋を支えると同時に「重し」の役割を担う。

 53年10月に始まった工事は急ピッチで進められた。同年12月の地元紙「名古屋タイムズ」は「現在四十七メートル」「一日平均二メートルほどずつ高くなる」と伝える。高所作業を担う作業員は、「体を縛りつけたんでは仕事にならん」と命綱を着けていなかったというから恐ろしい。

 開業当日は入場3時間待ち、年間約100万人が来場したが次第に減少。2011年にはテレビ塔としての役目も終えた。一時は存続を危ぶまれたが20年、4~5階に高級ホテルを新設、基礎部分に免震装置を入れるなど全面リニューアル。22年には国の重要文化財に指定された。「送信設備がなくなったことでチャレンジできることもある」。テレビ塔勤務46年の若山さんは熱を込めて話した。

(片野美羽、写真も)

 DATA

  設計:内藤多仲
  改修設計:日建設計
  階数:地上5階、地下1階
  用途:展望台、宿泊施設
  完成:1954年

 《最寄り駅》:久屋大通、栄


建モノがたり

 タワー内のスカイデッキMIRAI360は地上90メートルに位置する全方位ガラス張りの屋内展望台。名古屋の景色を一望できる。テーブル席があり、コンセント、WiFiを完備。1300円。午前10時~午後9時(土曜は9時40分まで、料金、営業時間は変動あり)。

▶公式サイト https://www.nagoya-tv-tower.co.jp/

▼地元の文化・伝統・食材・アート・クラフトなどを体感できるホテル「THE TOWER HOTEL NAGOYA」
https://thetowerhotel.jp/

 

(2024年3月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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