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建モノがたり

高槻城公園芸術文化劇場南館(大阪府高槻市)

地元産の木 余すことなく

音響効果を計算して、壁や天井に木のキューブがちりばめられた大ホール

 私鉄駅から商店街を通って住宅街を抜けると、「城」が現れた。下部は、細長い板材を縦に一定の間隔で並べた「ルーバー」で覆われ、ぬくもりが感じられる。

 江戸時代に北摂地域唯一の城郭だった高槻城。跡地に立っていた築50年以上の市民会館が、高槻城公園内に芸術文化劇場として生まれ変わった。

 南館は約80メートル四方で、地上3階、地下2階。緞帳(どんちょう)や照明設備などを収納・昇降させるフライタワーの高さは約30メートルで、大小三つのホールとスタジオ10室を備える。それぞれを平面に配置することで、劇場全体の規模を抑えた。館内の複数の通路は公園とつながり、自由に行き来できる。

 設計を担当した日建設計の江副敏史さん(68)は「高槻市は城下町で、北部に北摂の山々が広がる。『森の木立』をテーマに、地元産の木を使う提案をした」と振り返る。

 大切にしたのは、木の使い方。以前に設計した文化ホールでは、丸太の外側部分で色や木目が美しい「白太(しらた)」のみを採用した。しかし、一部だけを使うのは、持続可能な木材の利用と言えるのだろうか。こう疑問を抱いた江副さんらは、丸太の部位ごとの特性を生かしながら、余すことなく使うと決めた。

 設計段階から部位ごとの必要数量や手配可能な量をシミュレーション。大阪府森林組合と対話を重ねた。

 使ったのはスギの間伐材。すべて大阪府産で、うち1割は地元北摂産。丸太の中心に近い部位で、燃えにくく耐候性がある「赤太(あかた)」を外装、「白太」は内装と小ホールのルーバーとして使った。

 丸太の中心部「芯持ち材」は、乾燥すると割れやすいため、仕上げ材で使われることは少ない。背割りを入れて12センチ角のキューブにし、約1500席の大ホールの壁面と天井にちりばめた。その数は2万7千個。小口を見せて木の生命感を出した。音が響きやすいコンクリートに木のキューブで凸凹をつくることで、柔らかい響きを目指した。演奏者から「高音域が気持ちいい」と好評を得ているという。

 木のぬくもりであふれる劇場は市民の憩いの場となっている。

(増田裕子)

 

 DATA

  設計:日建設計
  階数:地上3階、地下2階
  用途:劇場
  完成:2022年

 《最寄り駅》:高槻市

 

建モノがたり

 同劇場南館から徒歩約1分にある野見神社(☎072・675・1316)は、平安時代、宇多天皇の治世に流行した悪疫を追い払うため、牛頭(ごず)天王をまつったのが起源。高槻城内守護として城主からも崇拝された。現在は高槻の鎮守とされている。

2026年2月24日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。

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