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建モノがたり

呉服町の商店街建築(静岡市)

高さはそろっているが、店の幅はまちまち

 静岡駅前のにぎやかな商店街。お店がまるで長屋のようにぴったりくっついて並んでいるのはなぜ?

 

 「おまち」。静岡駅から徒歩圏内に広がる中心市街地を、地域の人々は親しみを込めてこう呼ぶ。駅前から約800メートル延びる呉服町通りは、老舗やチェーン店、飲食店などが隙間なく連なっている。

 街並みがつくられたのは戦後の復興期。おまちの大半は1940年の大火、45年の大空襲で焼失した。木造家屋が密集していたため、被害は甚大だった。

 復興にあたり商店街には、延焼を食い止める「壁」となる建物が計画された。鉄筋コンクリート造の防火建築帯が全国的に建った時代。呉服町通りにはまず57~58年、6棟が完成した。

 いずれも3~4階建てで、もともとその地に構えていた店などの共同ビル。多くは店の間口に合わせて最上階まで壁で仕切られ、隣との行き来はできない。間口の広さも奥行きも、店によりまちまちだ。

 駅寄りのビルに入る婦人服地販売店「ジョインごとう」は竣工時、1階に店、2階に洋服仕立て部署、3階に自宅があった。代表の後藤洋さん(74)は当時小学生。「お客さんや店員の間をぬうように進み、店内の階段を上って帰宅していました」

 共同ビルには、にぎわいへの願いも込められた。さかのぼること昭和初期、おまちに二つの百貨店が開店。「ならば商店街は『横のデパート』にと、店主たちが思い描いた」と、静岡呉服町名店街理事長の中村陽史さん(74)。1階の軒高をそろえて庇を設置し、上階の窓の位置を統一。店が後退して両側の歩道幅を4.5メートルずつに広げた街並みが、今に引き継がれている。

 築66年の静岡呉服町ビルで雑貨店「八幡屋」を営む中村さん。建物の老朽化、商店街の来客減など時代の変化を受ける中、「当時のチャレンジ精神を受け継ぎたい」とビル活用の可能性を探る。

 2021年、1階奥の空き店舗を貸しギャラリーに改装。コンクリートむき出しの空間で展覧会や演劇公演が行われた。「レトロな旅」と題してビル内部の見学ツアーを開くなど、「古さ」を生かした試みも続けている。

(木谷恵吏、写真も)

 DATA

  階数:3~4階
  用途:店舗、事務所、住居など
  完成:1957~58年

 《最寄り駅》:静岡


建モノがたり

 ビルの一部を客室にした分散型ホテル「ビル泊」(☎054・292・6800)は、商店街の共同ビルにも泊まることができる。呉服町通りのビルなど7カ所12室を改装し、キッチン付きや大人数用、メゾネットなど多様な客室に。静岡駅近くのレセプションでチェックイン。スタッフが「おまち」を紹介しながら客室まで案内するという。

 

▼記者の現地ルポや、防火建築帯を研究する大学教授のインタビューはこちらから
https://asahi-mullion.com/column/article/tatemono/6236

2024年11月12日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください

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