長野・軽井沢の自然と調和を目指した美術館。光と木々、地形をいかして、森の中を散策するような感覚で絵画に出会える。
※軽井沢千住博美術館は本来は撮影禁止となっております。
※動画の展示内容は取材時の10月時点でのものです。
長野県軽井沢町の中軽井沢。幹線道路から、色づいた広葉樹や様々な草木の中の小道を進むと、ガラス張りの入り口に着く。
開館から15年目を迎えた「軽井沢千住博美術館」。日本画家千住博さんの作品を初期から最新作まで約100点所蔵、約50点を展示している。
入り口の自動ドアが開くと、光あふれ、広々とした空間に息をのむ。白とグレーを基調とした館内の床は緩やかに起伏して、外部吹き抜けの中庭から自然光が柔らかく差し込む。中庭に植栽されたカエデなどの木々の緑に癒やされる。
約2千平方メートルの館内に柱や仕切りがほぼなく、作品の展示壁が様々な向きに立っている。作品の向きも様々で、順路もない。回遊するように歩いていくと、絵が折り重なり、徐々に遠くの絵が近づいてくる。
美術館を運営する公益財団法人の常務理事菅谷誠二さん(54)は「時間や季節によって光や景色が変化し、作品の見え方も変わる。1時間でも2時間でもご覧になっている方がいらっしゃいます」と話す。
千住さんの作品に感動した財団の理事長品川惠保(しげほ)さん(77)が美術館を構想し、千住さん自身が建築家の西沢立衛さん(59)に設計を依頼した。
千住さんと打ち合わせを重ね、西沢さんが目指したのが「軽井沢の自然と調和し、開かれた、新しい美術館」。平らに造成せずに元の地形をいかしたため、床に3・5メートルほどの高低差があり、展示壁が柱と耐震壁の役目を果たす。外部吹き抜けの中庭を4カ所設けたことで、館の内と外が混ざり合うような雰囲気を生み出した。
もうひとつの大きな特徴は「自由な曲線」だ。床の起伏や中庭の大きなガラス、接ぎ目のない大屋根は定形的でない、不規則な曲線。この滑らかな曲線が自然との一体感を強めている。
館の周りの「カラーリーフガーデン」にはシルバーや赤、紫、黄など様々な葉色を持つ150種類以上の植物が茂る。
紅葉の季節が足早に過ぎ、冬の装いだ。12月26日から冬季休館。春の光が近づく3月から、再び私たちを出迎えてくれる。
(斉藤梨佳、写真も)
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DATA 設計:西沢立衛建築設計事務所 《最寄り》:中軽井沢駅から車 |
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敷地内のブランジェ浅野屋 軽井沢千住博美術館店(☎0267・46・0211)では、長野県産の食材を使ったパンなどを購入でき、併設のカフェでも食べられる。【前】9時~【後】5時(カフェラストオーダーは4時まで)。【火】、12月26日~2月28日休み。