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アートリップ

Echoes Infinity Immortal Flowers 
大巻伸嗣(しんじ)作(東京都千代田区)

花で迎える街の番人

周囲を映し、日々異なる表情を見せる=伊ケ崎忍撮影
周囲を映し、日々異なる表情を見せる=伊ケ崎忍撮影
周囲を映し、日々異なる表情を見せる=伊ケ崎忍撮影 施設内の名和晃平作品「White Deer」=伊ケ崎忍撮影

 皇居外堀にかかる橋の向こうに巨大なオブジェが姿を現す。色とりどりの桜や朝顔、蝶(ちょう)がちりばめられ、内側は鏡張り。近づくと自分の姿が映った。

 日本の伝統文様をモチーフに、ステンレス製のパーツを組み合わせた高さ8メートルの作品。複合施設・東京ガーデンテラス紀尾井町の開業に伴い、昨年制作された。2011年に閉館したグランドプリンスホテル赤坂跡として記憶に新しいが、古くは紀伊藩の江戸屋敷跡でもある。

 作者で現代美術家の大巻伸嗣さん(46)は、「長い歴史を持ち、今は文化の発信地。施設の入り口部分に立つことで『土地の番人』のような存在になれば」と話す。見る人に強い印象を与えるよう、あえて派手な色合いに。パーツの配色は、鏡面への映り込みや、ビル上層階からの視線も意識した。

 計画時、オブジェの重量は、計算上20トン超だった。大巻さんは、構造やステンレスの加工法についてスタッフらと試行錯誤を重ね、約半分にまで抑えた。「模型を作るまでは簡単なのですが……。アート作品は決して一人では作れないことを今回強く感じました」と振り返る。

 鏡が周囲を映すせいか、意外にもその場になじむ。カメラを向ける人や買い物客、ビルで働くビジネスマンなど、作品の周りには絶え間なく人が行き交っていた。

(渡辺鮎美)

 東京ガーデンテラス紀尾井町

 2016年7月開業。オフィスやホテル、店舗などがあり、敷地内には本作を含む8作家のアート作品が点在する。また、かつて「グランドプリンスホテル赤坂旧館」として親しまれた旧朝鮮王室の邸宅は、外壁や照明が建設当時の資料から復元され、「赤坂プリンス クラシックハウス」としてオープンした。皇居周辺の自然環境を生かして整備されたビオトープもある。

 《アクセス》地下鉄永田町駅出口直結。


ぶらり発見

パレショコラ

 東京ガーデンテラス紀尾井町内のチョコレート専門店ベルアメール(TEL03・6256・9907)では、直径6センチの丸い板チョコ・パレショコラ(写真、1枚281円)をはじめ、季節ごとに様々なチョコレートが登場する。取材時は、バレンタインデー向けの商品が多数並んでいた。

 昨年から、年間を通じて一般公開している国宝の迎賓館赤坂離宮(TEL5728・7788)は、ガーデンテラスから徒歩15分ほど。本館と主庭は参観料1000円。前庭は無料で見学できる。原則(水)休み。公開日程、参観方法は問い合わせを。

(2017年2月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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