読んでたのしい、当たってうれしい。

松尾貴史さん
マリーアイランガニー ポークカレー

 カレー店を巡り歩く僕に、ラジオで共演した加藤紀子さんが教えてくれたスリランカカレーの名店です。店主の義父が母国に帰って焙煎(ばいせん)するスパイスは、香りの深みが違います。さらっとした液状とは思えない、コクのあるまろやかなうまみが押し寄せます。

 軟らかく煮込んだ豚のかたまり肉をカレーになじませながら食べると、バランスよく最後までおいしい。ピクルス代わりの口直しに、香りのよいスリランカの紅茶も頼みます。

 洋食文化のある神戸生まれ。幼いころ、店でカレーを頼むと「ご飯の白いとこがなくなるまで混ぜてぇ」と父に甘えたものです。

 学生時代に通った地元のカレー屋は閉店時間が早かった。ある日、人混みを急ぐ途中、年配男性に当たって倒してしまいました。その場にいた大男が僕を取り押さえる中、年配男性は「自分が悪いんだ」と必死に制してくれました。その人は後の総理大臣、宮沢喜一さんだったんです。おかげで店にも間に合って、宮沢さんは恩人です(笑)。

 僕は落語をやったり、下北沢のカレー店のオーナーであったりしますが、何かを「探究」できない性分。座右の銘は「中途半端」です。結果的に打ち込んでいたのは楽しんだから。探究ではなく「偏愛」なんです。

(聞き手・中村さやか)

 

  ◆東京都渋谷区宇田川町34の6M&Iビル5階(☎03・6455・3216)。1800円。午前11時半~午後2時半、午後6時~10時(いずれもラストオーダー)。月休み(不定休あり)。

 


 

 まつお・たかし 俳優、タレント。1960年神戸市生まれ。3月に「違和感気質(かたぎ)」(毎日新聞出版)を出版。松尾さんが新聞に連載する社会派コラムの書籍化第6弾で、日常に潜むさまざまな「違和感」を鋭く斬る。
 
(2026年6月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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