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アートリップ

30億年のゼロ 
たほりつこ作(名古屋市中村区)

再生材に託した思い

「星」の間を人々が行き交う=山本倫子撮影
「星」の間を人々が行き交う=山本倫子撮影
「星」の間を人々が行き交う=山本倫子撮影 芝生が一年中青く見えるよう、春と秋に張り替える=山本倫子撮影

 午後6時、名古屋駅前のミッドランドスクエア。家路を急ぐ人々を横目に、ブランドショップの角を曲がると、目の前に小さな宇宙が広がった。

 銀河を思わせる渦模様の広場に、「地球」を中心とした三つの陶の星が並ぶ。制作は、東京芸大教授のたほりつこさん。1980年代から、人と環境の共生をテーマにしたパブリックアートを国内外で手がける。

 2007年の開業に合わせて依頼を受けた。ビルの事業主は東和不動産とトヨタ自動車、毎日新聞社。たほさんは、自動車の廃棄ガラスを照明として地面に埋め込み、新聞用紙の焼却灰を土に混ぜて、三つの球体に焼き上げた。「名古屋は産業の街。便利さの影には廃棄物がある。未来の再生と循環を牽引(けんいん)する街の姿を表現したかった」

 上半分が芝で覆われた直径2・5メートルの「地球」には、「聖なる森」を象徴する榊(さかき)の木が立つ。「30億年後も、青い地球がありますように」。常緑の榊に、たほさんは環境への願いを込める。

 毎月第4土曜、広場は無農薬の野菜や無添加のパンなどを販売する「ミッドランドマルシェ」でにぎわう。マルシェのコンセプトは「子どもたちに安心安全な未来を残すこと」。代表の青木泰樹(たいき)さん(57)は「作品のテーマと一緒。うれしい偶然ですよね」。

(中村茉莉花)

 ミッドランドスクエア

 名古屋駅周辺の再開発に先駆け、2007年にオープン。中部一の高さを誇る247メートル、地上47階のオフィス棟と、地上6階の商業棟の2棟からなる。商業棟には海外のブランド店や映画館、飲食店などが並ぶ。開業10周年を記念して、コンサートやイルミネーション点灯など、様々なイベントを実施中(4月9日まで)。敷地内には、他にも7作家による八つのアート作品が設置されている。

 《アクセス》JR名古屋駅から徒歩5分。


ぶらり発見

トリュフたこ焼き

 ミッドランドスクエアのオフィス棟44~46階には、屋外型展望施設スカイプロムナードがあり、風を感じながら名古屋の町並みを一望できる。午前11時~午後10時(入場は30分前まで)。750円、中高生500円、小学生平日のみ300円(4月9日までは無料)。問い合わせは総合インフォメーション(052・527・8877)。

 作品から通りを挟んで向かいのトリュフたこ焼き Bonobo(TEL052・581・8844)の名物は、「トリュフたこ焼き」(6個入り700円~)=写真。口の中でふわっとトリュフオイルが香り、リッチな気分に。種類豊富なクラフトビールと一緒に味わえる。午後5時~午前0時。

(2017年3月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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