アートリップ

時の旅人 
鈴木典明作(滋賀県草津市)

街道の往来 SF風に

20度傾斜した台座に立つオブジェ。アルファベットのXのように交差している=松谷常弘撮影

20度傾斜した台座に立つオブジェ。アルファベットのXのように交差している=松谷常弘撮影

  • 20度傾斜した台座に立つオブジェ。アルファベットのXのように交差している=松谷常弘撮影
  • 近くには東海道と中山道の分岐を示すマンホールが=松谷常弘撮影

 琵琶湖に面する滋賀県草津市。JR草津駅から南へ10分ほど歩くと、近代的な建物にまじって、漆喰(しっくい)の壁に格子窓のある屋敷が現れた。追分の道標や高札場跡もある。かつて東海道と中山道が合流し、本陣を構えた草津宿の面影がうかがえる。

 ふと、誰かが疾走する気配を感じて見上げると、無数のステンレス棒が張り出す一対のオブジェが立っていた。高さ約2・5メートル、幅は最長3メートル。同県高島市の芳春院住職で、中学校美術教諭の鈴木典明さん(54)が、1998年に制作した。

 草津市では、88~2000年度に、市民に心の潤いを提供する目的で、街角に立体作品を設置する事業を実施。土地柄にちなんだ作品を募り、全28基が点在する。本作もその一つだ。

 作品のテーマは「旅人」。溶接で形作った輪郭に、6~12ミリと太さの異なるステンレスの丸棒を接合し、人々が忙(せわ)しなく行き交う様を表現した。残像効果のような趣に鈴木さんは、「SF映画好きが高じまして」と笑う。街道の要衝として栄えた草津宿を、どれだけの人が往来したか思いを巡らせると、曹洞宗の宗祖・道元禅師の教え「輪廻(りんね)転生」と重なった。「袖振り合うも多生の縁。一期一会の縁で人はつながっている」と鈴木さん。過去から現在、未来へと続く時間の軌跡を表すとともに、人々の往来でこの町が発展する願いも込めている。

(尾島武子)

 草津宿

 江戸時代の主要路「五街道」のなかで、江戸・日本橋を起点に、京都・三条大橋まで続いた「東海道」の52番目の宿場町。内陸を通る「中山道」が、草津宿で合流する。参勤交代の大名行列、公家、庶民などの往来で、交通の要衝として栄えた。1843(天保14)年の文献には、大名などが利用する2軒の本陣をはじめ、2軒の脇本陣、72軒の旅籠(はたご)が軒を連ねた記録が残る。

 《作品へのアクセス》JR草津駅東口から徒歩約10分。草津まちづくりセンター前に設置。


ぶらり発見

うばがもち

 草津宿街道交流館(TEL077・567・0030)は、作品から徒歩5分。資料展示のほか、江戸時代の草津宿の町並みをジオラマで再現する。入館料200円。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。(月)((祝)(休)の場合は翌平日)、12月28日~1月4日休み。

 草津名物「うばがもち」(写真、12粒、600円~)は、草津駅から徒歩15分の、お菓子処 うばがもちや本店(TEL566・2580)で。同店は、歌川広重の浮世絵「草津 名物立場」にも登場した。午前9時~午後7時((土)(日)(祝)(休)は8時~8時)。

(2018年12月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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