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アートリップ

ムーブメントNo.3 
フロリアン・クラール作(神奈川県川崎市)

「音楽の町」に溶け込んで

制作期間は6~7カ月=相場郁朗撮影
制作期間は6~7カ月=相場郁朗撮影
制作期間は6~7カ月=相場郁朗撮影 インド出身の彫刻家アニッシュ・カプーア作「ダブル・インバーション」。くぼんだ鏡面の前に立つと、上下が逆さまに映る=相場郁朗撮影

 川崎駅前にそびえ立つ複合施設、ミューザ川崎。音楽ホールへ向かうと、アプローチの壁面に浮かび上がるサーフボード形のオブジェに出会った。

 都市基盤整備公団(当時)が建設した同施設にあるこのオブジェは、ドイツ出身の現代美術家、フロリアン・クラールさん(50)が2003年に制作。「音楽」がテーマのアートワークのうちの一作で、高さ1・8×幅12・6メートルのアルミニウム製だ。約120のパーツを三つの大きなブロックに溶接し、ボルトでつなぎ合わせた。音楽との共通点を問うと、「リズミカルな調和が抽象的な全体像を生み出しているところ」と話してくれた。

 工場や研究所が立ち並ぶ川崎だが、実は音楽との関わりが深い。市内には昭和音大や洗足学園音大があり、歴史の長い市民オーケストラや合唱団も。同市は駅西口エリアの再開発にあたり、「音楽のまち・かわさき」を打ち出した。その象徴がシンフォニーホールを擁するミューザ川崎だ。同施設には本作を含め、七つの音楽にまつわる作品が点在する。

 合唱でホールの舞台に立ったという藤井靖子さん(48)は「れんがの壁になじんでいるのがいいですね」と目を細める。「風景の一部として、時間とともに少しずつ変化して見えてくるかもしれない。そんなふうに感じてもらえたら」とフロリアンさん。

(下島智子)

 ミューザ川崎

 2003年12月竣工(しゅんこう)。「MUSIC」と、人が集まる場を表す「座」をかけ合わせて命名。全1997席の客席が舞台を360度取り囲む「ワインヤード形式」のシンフォニーホールをはじめ、飲食店などの店舗があるホール棟と、高さ約130メートル、地上27階のオフィス棟からなる。アートワークは「地域との結びつき」「音楽」「国際性」「親しみやすいアートワーク」の4テーマで実施。5カ国7組のアーティストが参加した。

 《アクセス》 川崎駅から徒歩3分。


ぶらり発見

昭和電工

 市民ナビゲーターの解説を聞きながら工場夜景を船から眺める、川崎工場夜景屋形船クルーズが人気=写真は昭和電工。毎月第2・4(土)(6~11月は毎週)運航。4000円、小学生3000円(要予約小学生以上対象)。所要時間約3時間。問い合わせは旅プラスワン(03・6866・9608)。

 かわさき餃子(ぎょうざ)舗の会(TEL044・276・8161)加盟の市内21店では、神奈川県産みそを使った「かわさき餃子みそ」で餃子を味わう。みそは駅併設の「かわさき きたテラス」でも購入可(756円)。

(2019年3月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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