読んでたのしい、当たってうれしい。

アートリップ

ムクムク 水の光と大地に捧げる詩
 五十嵐威暢作(北海道北斗市)

曲線で広がる道南の湖や花

85色、420ピースほどのドイツ製手吹きガラスが使われている。作品下の窓からは、発着する新幹線が見える
85色、420ピースほどのドイツ製手吹きガラスが使われている。作品下の窓からは、発着する新幹線が見える

 青函トンネルを抜け、北海道新幹線の新函館北斗駅に降り立つ。乗客でにぎわう改札を通り、正面通路に出ると、色鮮やかに輝く5基のオブジェが現れた。縦4メートル、横15・7メートルの壁面に配置されたLED内照式ステンドグラスだ。

 2016年3月、北海道新幹線開業を記念して設置された。原画を手がけ、監修したのは、北海道滝川市出身の彫刻家五十嵐威暢さん(75)。モチーフは、大沼国定公園の大沼湖や花など、道南の豊かな自然だ。「子どものように自由につくりたい」と、色紙を曲線ばさみで即興的に切って作ったピースを、紙吹雪のように落とし、偶然できた形を採用した。

 五十嵐さんの原画をもとに制作したのは、クレアーレ熱海ゆがわら工房。通常ステンドグラスは、四角の金属枠で区切りガラスの荷重を分散させるが、本作は曲線の金属枠で構成することに挑戦。内部に直線や円形の鉛線を張り巡らし、ガラス片を固定した。「目が覚めるような華やかなステンドグラスを、生命力を持った自由曲線で作りたかった」と五十嵐さんは語る。

 旭川から函館観光に訪れた団体職員の金子幸代さん(35)は「駅に着いてすぐ目に入ったきれいな色に驚いた。旅のドキドキ、ワクワク感が高まります」と話す。清涼な水が湧き出したようなのびのびとした形は、雄大な自然の広がりを予感させる。次の目的地で出会うだろう豊潤な景色を思い、胸が高鳴った。

(上江洲仁美、写真も)

 新函館北斗駅

 2016年3月26日に開業した北海道新幹線の終点。東京―新函館北斗駅間は最速3時間58分。駅構内にはアンテナショップや観光案内所などがある。


ぶらり発見

テテ・カフェ 新函館北斗駅から徒歩3分のテテ・カフェ(問い合わせは0138・77・0606)では、北海道産牛乳を使用した濃厚なジェラート(写真、シングル400円、季節により異なるフレーバー約10種類)や道南の食材などを使ったパフェが味わえる。きじひき高原は、同駅から車で15分。標高560メートルに位置するパノラマ展望台からは、大沼湖や駒ケ岳、函館山、津軽海峡などを一望できる。問い合わせは北斗市観光協会(77・5011)。

(2019年8月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

アートリップの新着記事

新着コラム