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美博ノート

「羽を上に開いたクジャクと五羽のミミズク」

ティンガティンガ絵画展(マコンデ美術館)

「羽を上に開いたクジャクと五羽のミミズク」 約60センチ四方
「羽を上に開いたクジャクと五羽のミミズク」 約60センチ四方

 目に鮮やかな極彩色のクジャクとミミズクが、とぼけた表情でこちらを見つめる。平面的な表現と豊かな色彩で、動植物や日常生活を描くティンガティンガ絵画の特色がよく表れた作品だ。

 アフリカ・タンザニアで、1960年代に生まれた絵画様式で、創始者が故エドワード・サイディ・ティンガティンガ。路上で絵を売る人の姿を見て、建材の板にエナメルペンキで描き始めたという。現在は血縁者を中心とした弟子たちが、観光客の土産用に描いている。

 「ティンガティンガ氏は簡素化した描線や背景を塗りつぶした素朴な表現でしたが、後進はグラデーションなどを使ってそれぞれに表現を発展させています」と、館長の水野恒男さんは話す。東アフリカのマコンデの人々による彫刻を収集する傍ら、様々な画家のティンガティンガ作品を30年ほど前までに買い集めた。

 本展では初公開の25点を展示。常設のティンガティンガ本人の作品と併せて楽しむことができる。

(2021年1月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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