読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「ホシバナモグラ」

大地のハンター展(名古屋市科学館)

仮剝製標本 国立科学博物館所蔵=日本経済新聞社提供
仮剝製標本 国立科学博物館所蔵=日本経済新聞社提供
仮剝製標本 国立科学博物館所蔵=日本経済新聞社提供 ホシバナモグラの鼻=国立科学博物館研究主幹・川田伸一郎さん提供

 北米・五大湖周辺の水辺にすみ、水中の昆虫などを食べるホシバナモグラ。鼻の穴の周りにはイソギンチャクのような触手が22本ある。

 狩りの際には鼻ちょうちんをつくって膨らませ、もう一度吸い込む。鼻ちょうちんに付いた臭いで獲物の存在を知り、触手にある小さな突起状の感覚受容器「アイマー器官」によって方向を特定する。

 一般的に土の中で暮らすモグラの目は退化し、光を感じる程度の機能しかない。このため鼻先にはアイマー器官を備え、獲物の振動を感じることができる。ホシバナモグラの鼻は水中での狩りのために、こうした仕組みがさらに進化したと考えられる。

 外敵に狙われにくい土の中に生活の場を移して適応、進化した「暗闇のハンター」モグラ。東京などを巡回した今展では、これら様々な動物の狩りの技術や体の進化に注目し、国立科学博物館の標本や剝製(はくせい)を中心に展示する。

(2022年3月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

美博ノートの新着記事

  • 上絵金彩綾棒踊(あやぼうおどり)図花瓶 山吹色から青色へ。本作品にも見られる鮮やかなグラデーションを得意としたのは明治時代に活躍した京都の窯元・九代帯山与兵衛(1856~1922)。技巧的な造形と華麗な色使いが、海外で高い評価を得た。

  • 釉下彩透彫(ゆうかさいすかしぼり)朝顔文花瓶 全体を包み込むように、大輪の花を咲かせる朝顔。透かし彫りが涼やかな本作品は、京都の窯元・七代錦光山宗兵衛(1868~1927)が、新しい技術や流行を取り入れて制作した。

  • 上絵金彩花文麒麟鈕(きりんちゅう)大香炉 墨色で丹念に描かれた木目模様。ふたには透かし彫りが施され、最上部に構える麒麟(きりん)の小さな牙が何本も見える。

  • 徳川家康画像(部分) 徳川家康晩年の肖像は、九男で尾張家初代の徳川義直(1600~50)が描いたものだ。面長でふくよかな顔、福耳、小ぶりな口などの特徴を捉えている。

新着コラム