五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
植物の葉がモチーフの本作は、絵付け職人による大胆な筆致が特徴だ。葉脈は漫画にも用いるGペンで軽やかに描かれている。図案を担当したのは、陶磁器デザイナーの先駆者・日根野作三(1907~84)。岐阜県内の工場と連携して制作したとされる。
現在の三重県伊賀市生まれの日根野は東京高等工芸学校(現千葉大工学部)を卒業後、愛知県瀬戸市の窯元や国立陶磁器試験所などで才能を発揮した。戦後独立し、47年に発足した日本陶磁振興会の指導者として、関西や東海地方の窯業地を巡った。
「ものづくりの機械化や量産化が進んだ時代、人々の生活に美しいものを届けるという使命感を強く持っていた」と三重県立美術館学芸員の高曽由子さんは話す。本作の「手描きの美しさを生かした人間味のあるデザイン」にはそんな日根野の思いが表れている。
※会期は9月24日まで。