読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

尿(いばり)する裸僧

碧南市藤井達吉現代美術館「顕神の夢 幻視の表現者」

村山槐多 1915年
油彩・キャンバス 80・3×60・6㌢ 長野県立美術館蔵

 裸の僧侶が鉢に向かって放尿する、強烈な印象の作品を生み出したのは、夭折(ようせつ)の洋画家・村山槐多(1896~1919)だ。


 早熟な槐多は絵画や詩に異才を発揮する一方、失恋、飲酒、放浪を経て、22歳で病死した。交流のあった詩人の高村光太郎は「強くて悲しい火だるま槐多」と詠んで悼んだ。


 全身から血のような赤い光を放つ裸僧は槐多自身ともいわれる。「巨大な僧の姿は背景の山と並んで、尿という滝を放出しているよう。自然を擬人化した山水画にも見える」と、碧南市藤井達吉現代美術館学芸員の大長悠子さんは話す。


 今展では槐多を、人知を超えた「何か」を感じ取った「幻視の画家」と捉え、「切にいま俺はさんらんたる幻の出現をまちのぞんで居る」とつづった日記の言葉も紹介している。

   ※会期は2月25日まで。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 今もモダン。様々な経験から培われた梅樹の色彩と造形感覚。

  • 笛を吹く人 焼き物のかけらを組み合わせて生まれた、独特の表情。

  • 交響 「作曲家が楽譜で作曲するように……」。晩年にたどりついた境地とは。

  • メトロ 戦後、劇的に変化した画風に驚き。ヨーロッパの空気を豊かな色彩で。

新着コラム