雪華図説
約20年にわたる研究成果を「雪華図説」にまとめ、雪の結晶図86種を記録した。
本作の題材は、源平合戦に想を得た謡曲「生田敦盛」。右側に描かれた若武者は一ノ谷の戦で討たれ、16歳で亡くなった平敦盛だ。僧侶のひざで手を合わせる子どもは、敦盛の遺児。夢のお告げを受けて源平合戦の古戦場・生田の森(現在の神戸市生田神社境内)に赴き、亡き父とつかの間の再会を果たす。
穏やかな表情で子を見つめる敦盛の姿は、今にも消え入りそうだ。「亡霊を表現するため薄く描かれてはいるが、敦盛の甲冑装束は若々しく華がある」と、大垣市守屋多々志美術館学芸員の川瀬邦聡さん。「守屋はかねて甲冑などの模写や研究に余念がなかった。本作の精緻な描写にも、その成果が十分に発揮されている」と解説する。
本作を発表したのは、終戦の3年後。守屋は第2次大戦中に中国で従軍し、終戦の翌年に復員した。戦死した友人や残された家族への思いを重ね、弔いを込めて描いたという。