読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

ふるさとの家

大垣市守屋多々志美術館「描き残すべきこと 守屋が描く戦中・戦後」

「朝餉」 1949年 紙本着色 軸装 四幅対 大垣市守屋多々志美術館蔵

 日本画家、守屋多々志の生家は、大垣市のみそたまり製造元。本作は、生家の暮らしを四つの場面で描いている。家族が囲む朝食、仕事の合間の休息、西日を背にたるを片付ける使用人たち、華やかな夏祭りの夜――。描いたのは、終戦の4年後だ。

 太平洋戦争中、守屋は中国で従軍。終戦の翌年の1946年に復員し、故郷の大垣を訪ねた。焦土と化した街並みを見てぼうぜんとしたが、それでも故郷に励まされた、と後に語ったという。
 「幼い頃の穏やかな日々を思い起こしていたのだろう。優しい筆致で表している」と、学芸員の上田朋子さん。生家をモチーフにした作品は、戦地に赴く前年の36年、東京美術学校の卒業制作でも描いていた。「復員した後にも、生家を描いているのが印象的。戦後は再び絵を描くことができるという喜びと故郷への思いから、生家に画題を求めたのだろう」

 

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 爆弾散華 碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「川端龍子展」の注目作をご紹介します。

新着コラム