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ぶらり、ミュージアム

所蔵作品は全て個人コレクション

(東京オペラシティ アートギャラリー)

東京オペラシティアートギャラリー外観
東京オペラシティアートギャラリー外観
東京オペラシティアートギャラリー外観 企画展展示風景「構造デザイナー・セシルバルモンドの世界」 2009 (c) Cecil Balmond 撮影:西川公朗 企画展示風景「アートがあれば II :9人のコレクターによるコレクションの場合」 2013 撮影:木奥惠三 収蔵品展展示風景「収蔵品展045 色について」 project N 展示風景「project N 47上西エリカ」 (c) KAMINISHI Erica 撮影:木奥惠三

 新宿からひと駅、京王新線・初台駅の直上に位置する東京オペラシティ アートギャラリーは、今から15年前の1999年に開館した比較的新しい美術館です。東京オペラシティビルと新国立劇場が隣接する敷地内には美術館だけでなく、世界トップクラスの音響特性を誇るコンサートホールやオペラ、バレエなどを公演する舞台(計6劇場・ホール)から構成される日本有数の「劇場都市」です。

 3、4階に展示面積1000平方メートルを有する東京オペラシティ アートギャラリーの大きな魅力として展示空間の高さがあげられます。巨大な現代アート作品の展示にも余裕でこたえられるその天井高は都心にある美術館では珍しいことです。特別展が毎回話題となりますが、それもこの面積+体積を最大限に生かした他では体感出来ないダイナミックな展示空間があるからこそ。そして展覧会ごとに全く違った空間に感じられ、空間全体を「作品」として観られる美術館でもあります。

 さて、意外と知られていないことですが、もともと収集機能を持たない美術館として運営しているにもかかわらずアートギャラリーには約3800点近くの所蔵作品があります。それこそこの美術館のもうひとつの大きな魅力である「寺田コレクション」に他なりません。現在、アートギャラリー名誉館長を務める寺田小太郎氏の個人コレクションです。

 東京オペラシティビルが建っている場所の地権者のひとりであった寺田氏は、99年に美術館が開館するにあたり後世に残せるものをと作品収集を始め、開館までのわずか3年間で約2700点もの作品を個人で購入したそうです。日本を代表する抽象画家、難波田龍起をきっかけに、大竹伸朗、奈良美智、李禹煥、長谷川潔、舟越桂など誰もが知るメジャーな作家から若手まで寺田氏の目にとまった多彩な作家から成る一大コレクションです。

 個人的には、保田井智之の作品に出会えたことがきっかけで毎回オペラシティに行く楽しみや期待度がぐんと増しました。特別展と同じ会期で毎回展示内容も変わります。特別展だけでなく、寺田氏の明確な美意識が感じ取れるコレクション展示もぜひ観て下さい。

 

耳よりばなし

 3つの展覧会を毎回同時に開催
 東京オペラシティ アートギャラリーでは、絵画、彫刻、写真、映像、デザイン、建築といった幅広いジャンルの中から開催する「企画展」を年に約4回開催しています。その開催期間に合わせ、「所蔵品展」(寺田コレクション)も展示替えを行い「日本的抽象」や「ブラック&ホワイト」などの切り口で所蔵品を紹介しています。さらに難波田龍起の頭文字をとった「プロジェクトN」という若手作家育成のための展示も毎回行っています。学芸員さんたちが選んだ旬の作家の作品も同時に楽しめます。


データ

東京オペラシティ アートギャラリー

〒163-1403
東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:午前11時~午後7時(金曜日・土曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)展示替期間中、年末年始
全館休館日(2月第2日曜日、8月第1日曜日)
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:http://www.operacity.jp/ag/


 【筆者プロフィール】

中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/

(2014年3月24日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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