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私の描くグッとムービー

谷川晃一さん(画家)
「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年)

「セコハンたち」の自由さ 魅力

谷川晃一さん(画家) 「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年)

 レンタルDVDで見て気に入り、DVDを購入した一本です。

 1960年代初頭の米テキサス州。14歳の孤独な少年ウォルターは、夏休みに2人の大伯父、ハブとガースの元に預けられます。莫大(ばくだい)な財産を持っているらしい2人は、財産目当てのセールスマンをライフルで威嚇したり、ハンティングするためにライオンを買ったり。自由奔放で魅力的なんです。そんな2人と過ごすうち、ウォルターは変わっていきます。きっかけは屋根裏部屋で見つけた美しい女性の古写真。ガースが語り始めた若かりし頃の愛と冒険の回顧談に魅せられ、自由な生き方に目覚めていくんです。

 心に残っているのは、回顧談の真偽を問うウォルターに「人には真実かどうかは別として、信じるべきことがある」と言うハブの台詞(せりふ)。自分が生きていくうえで何を信じるのか。愛や勇気、高潔さこそ大事なものなんだと。

 僕も自由に生きてきました。絵描きになるって決めたのは中学2年のとき。絵を教わる必要はないと思っていたので、働きながら描こうと、高卒で就職したんです。その後、職をいくつか変え、絵一本になったのは40代になってから。自由な生き方のつらさも経験しましたが、絵への感性を信じてやってきましたね。

 イラストの中に書いた「SECONDHAND LIONS」は原題です。セコハン(中古)の切なさと強さを併せ持つ2人のことを表してもいる。いい題名ですね。

聞き手・牧野祥

 

  監督=ティム・マッキャンリーズ
  出演=マイケル・ケイン、ロバート・デュバル、ハーレイ・ジョエル・オスメントほか
たにかわ・こういち
 1938年生まれ。美術評論家、絵本作家としても活動。近著にエッセー「雑めく心」(せりか書房)など。
(2017年4月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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