私の描くグッとムービー

矢部太郎さん(お笑い芸人、漫画家)
「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017年)

背中が語る 夢の国近くの貧窮

 6歳の女の子ムーニーとシングルマザーのヘイリーは「隠れホームレス」。家がなく、フロリダのディズニーワールド近くの安モーテルに住んでいる。夢の世界近くの貧困社会を描いています。管理人のボビーは、彼らや同じ境遇の家族に時に厳しく、時に優しく接しています。

 映画館で見ながら、この作品を絵に描きたいなって思ったんです。紫色のモーテルの壁の色など、現実感のない、鮮やかな色彩が鮮烈で。でも、ストーリーは現実に起きているリアルな内容。ドキュメンタリーっぽく見せながら、物語を明確に構成しているからこそ、伝わってくるものがあります。伏線も緻密(ちみつ)に張られていて、ショーン・ベイカー監督の作家性を強く感じますね。

 ある事件を起こした後やラストで走る子どもたち、金策に悩んで決意をするヘイリー、ボビーと離れて暮らす息子の口論などの重要な場面で、正面からのアップやせりふではなく、背中の演技で伝えるカットが多いのが印象的でした。

 ムーニーはとても愛らしく、楽しそう。ヘイリーは無職で、部外者からは「あんな暮らしをしてかわいそう」と見られるかもしれないけれど、そういう目線で撮っていないのもフェアだと思います。

 こんな生活ずっとは続かないだろうという、現実っぽくない現実が展開された後に、それを更に超えるラストが用意されています。映画にする意味、映画を見る意味を感じさせてくれる作品です。

聞き手・下島智子

 

  監督・共同脚本=ショーン・ベイカー
  製作=米
  出演=ブルックリン・キンバリー・プリンス、ウィレム・デフォーほか
 やべ・たろう
 お笑いコンビ「カラテカ」のボケ担当。週刊新潮で「大家さんと僕」を連載中。同作で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。

 


矢部太郎さんのサイン入り色紙プレゼント!

 

矢部太郎さんのサイン入り色紙

 矢部太郎さん直筆のサイン入り色紙を3人にプレゼント。
 ※応募には朝日マリオン・コムの会員登録が必要です。以下の応募ページから会員登録を行って、ご応募ください。

終了しました

たくさんのご応募ありがとうございました。

 

(2019年3月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

「私の描くグッとムービー」の新着記事 一覧を見る
やなぎみわ さん(美術家、演出家)「8 1/2(はっかにぶんのいち」(1963年)

やなぎみわ さん(美術家、演出家)
「8 1/2(はっかにぶんのいち」(1963年)

大学生のとき、オールナイト上映で見ました。何が言いたいのか全然わからなかったけれどラストで感動した、初めての映画です。

飯野和好さん(絵本作家)「番場の忠太郎 瞼の母」(1931年)

飯野和好さん(絵本作家)
「番場の忠太郎 瞼の母」(1931年)

子どもの頃は邦画といえば時代劇、洋画といえば西部劇でしたね。

佐藤好春さん(アニメーター)「ダイ・ハード」(1988年)

佐藤好春さん(アニメーター)
「ダイ・ハード」(1988年)

当時のアクション映画にはめずらしく、普通のおじさんの主人公が体を張って悪と闘います。

本秀康さん(漫画家、イラストレーター)「バンデットQ」(1981年)

本秀康さん(漫画家、イラストレーター)
「バンデットQ」(1981年)

僕の漫画家デビューは25歳。漫画雑誌「ガロ」(2002年休刊)でした。高校生の頃に一度、ガロに持ち込みをして、当時の編集長に「映画を見て話作りの勉強をしなさい」と言われ、1~2年ほど映画を見まくりました。そんな時期にこのSFファンタジー映画と出会ったんです。

新着コラム 一覧を見る
ブームの卵

ブームの卵

5月24日 注目グッズ
「SinkPlate」など

食器を洗っていて、気がつくと洋服がビショビショにぬれていたことってない?

「久世福商店」の蜜自慢かりんとう

オトコの別腹

中村征夫さん
「久世福商店」の蜜自慢かりんとう

水中での撮影は体力勝負です。自分の体やカメラが潮に流されないように、撮りたい瞬間を待つ。神経も使います。その合間に食べたくなるのが、このかりんとう。

「リストランテ文流」の海の幸とキノコのスパゲッティ(トマトクリーム)

おんなのイケ麺(めん)

文月悠光さん
「リストランテ文流」の海の幸とキノコのスパゲッティ(トマトクリーム)

2010年に大学進学で札幌から上京しました。

森アーツセンターギャラリー

気になる一品

森アーツセンターギャラリー

原画や資料など約500点を紹介する「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」(6月16日まで)を開催中の森アーツセンターギャラリー。

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。