マスダカルシ(新聞切り絵作家)
「風の谷のナウシカ」(1984年) 瘴気けむる腐森。生い茂る菌類の美しさにワクワク
「風の谷のナウシカ」(1984年) 瘴気けむる腐森。生い茂る菌類の美しさにワクワク
アフガニスタンやパキスタンで35年にわたり病や貧困に苦しむ人々に寄り添った医師、中村哲さんの集大成がこのドキュメンタリー作品です。
中村さんとの出会いは40年以上前、福岡に移り住んだ時、九州大学医学部長だった問田直幹先生(初代ペシャワールの会会長)と無教会の家庭集会で知り合い、その教え子が中村さんでした。1984年、中村さんがペシャワルに旅立つ壮行会にも出席しました。ニコニコ笑って親しみやすく、飄々としながら人を引きつける強い力がある。赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」のパパみたいと思いました(笑)。
「人道支援で何が得られますか」という若者の質問に、「何もないが、男があがる」とひと言。異なる意見が出たときも否定せず、間違いを指摘したりもしない。「もっともです。よく質問をしてくださった」と受け入れ、言葉を選びながら穏やかに語りかける。相手に寄り添う姿勢が一貫していました。
その姿勢は自然に対しても同じ。土地を潤すために用水路を掘る時、コンクリートで固めるのではなく現地の人たちの手で維持・修理ができるように、地元で手に入る素材を使い、自然と折り合いをつけながら進めた。「川にだって意思も人権もある。それに逆らわない」と。
間もなく没後6年。愛唱していた賛美歌234A番は彼の人生そのもの。「裏切られても裏切り返さない誠実さこそ、人々を動かすことができる」と口にしていました。この映画と併せて著作「医者、用水路を拓く」(石風社)もぜひ読んでください。何を考え、何を目指したのか。ぜひ知ってほしい。
(聞き手・阿部毅)
![]() 監督・撮影=谷津賢二
朗読=石橋蓮司 語り=中里雅子 企画=ペシャワール会 製作=日本電波ニュース社
ながの・ひでこ 1941年愛媛県生まれ。代表的な作品に「とうさんかあさん」(石風社)、「おかあさんがおかあさんになった日」「せとうちたいこさん デパートいきタイ」(ともに童心社)など。
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