長野ヒデ子さん(絵本作家)
「荒野に希望の灯をともす」(2022年) アフガニスタンやパキスタンで35年にわたり病や貧困に苦しむ人々に寄り添った医師、中村哲さんの集大成がこのドキュメンタリー作品です。
「荒野に希望の灯をともす」(2022年) アフガニスタンやパキスタンで35年にわたり病や貧困に苦しむ人々に寄り添った医師、中村哲さんの集大成がこのドキュメンタリー作品です。
家にこの作品のビデオテープがあって、4、5歳の頃よく見ていました。黒澤明監督が実際に見た夢をもとにつくった作品で、八つのお話がオムニバス形式になっています。
当時全てを見続ける集中力がなかったので、「日照り雨」と「桃畑」の二つだけを何度も見ました。どちらのお話も主人公は5歳くらいの男の子で、ちょうど私の年齢と同じくらい。男の子に自分を重ねていたんだと思います。
お母さんの言いつけをやぶり、見てはいけないと言われた「狐(きつね)の嫁入り」を見てしまう「日照り雨」と、ひな人形のような姿をした大勢の木霊が舞を披露してくれる「桃畑」。自分には見ることのできない不思議な世界をのぞいているような感覚でした。
その頃はこれがファンタジーだということが分からず、自分が生きている世界でもお話と同じことが起こると考えていました。天気雨になると、「狐の嫁入りが来ちゃうから早く帰らなきゃ」とおびえたり、おひな様を見ながら自分が見ていないところで踊っているのかもと想像したり。子供の頃の記憶と強く結びついている作品なので、主人公の男の子の体験がまるで自分が体験したことのように感じています。
黒澤監督は夢そのものを基にお話を考えましたが、私は夢を見ている時に「いま自分は夢を見ている」と意識できる時があり、夢の中で構想中の話の続きを考えたりします。そうすると起きている時よりも頭の中で情景が想像しやすくてはかどる気がします。
(聞き手・中山幸穂)
![]() 監督・脚本=黒澤明
出演=寺尾聰、倍賞美津子、原田美枝子ほか
1992年生まれ、埼玉県出身。主な作品に「はにわくん」(絵本塾出版)、「こけしぞろぞろ」(講談社)など。埼玉県加須市の観光大使も務める。
HP:https://www.matsunaga-moe.com/ |